白銀の絆(前編)香坂幸緒眼鏡との間の確執が取れてから二週間後。 心から結ばれてから、初めての相手の誕生日が訪れようとしていた。 ここ暫くはまだ身体のリハビリも兼ねて、日中は働いている相手の代わりに夕食は 御堂の方が担当していた。 だが…本日は一際力を入れて、料理を作る事に当たっていた。 「…フフフフ、これを食べたらあいつもきっと驚くに違いない…」 異様な気合を込めながら、グツグツと煮立つ鍋の中身を丁寧に掻き回していく。 大きな鉄製の鍋の中に入っている物は…数日前から仕込んで、丹念に 煮込み上げていたビーフシチューだった。 まだ時間の融通が利いた学生時代ならともかく、社会人になってエリートコース になってからは忙しくて料理を作る暇などなかったので…実際に作って見たのは 十数年ぶりになっていたが…渾身の料理の出来栄えに御堂は酷く満足げだった。 塊のままの牛肉のブロックを数日掛けて野菜と一緒にトロ火で煮込み続けた。 肉が蕩けるように柔らかくなってから、ホールトマトとローリエ等の香辛料の類を 一緒に投入し、仕上げに高級なワインと市販の高級なビーフシチューの元を使った それは…芳醇な匂いを称えて、こうしているだけでも食欲を掻き立てる程だった。 一口味見をしてみると、その完成度の高さに自分でも満足げの笑みを浮かべた。 元々御堂は完璧主義者である。 やるからには徹底的にやらないと気が済まない性分だ。 本日は相手の誕生日に当たる訳だし、どうせなら盛大に祝ってやりたい。 上質なライトグレイのシャツに、すっきりとしたラインのスーツズボン。 それにカーキーのエプロンを身に纏いながら…時計の針を確認して ポタージュスープとサラダ、カリっと焼いたフランスパンの用意をしていく。 「…そろそろ佐伯が帰ってくる頃だな…」 本日の克哉は、来年から始動するプロジェクトの前準備の為に 出勤している。 今年中にやるべき事は二日前には全て終えた、と言っていたが…取引先 よりも先んずる為や二重の確認の為に昨日も今日も、MGNに赴いていた。 今日が終われば、年明けから七日くらいまでの一週間は休んでも何の 問題ない…と言っていたのだが。 「…本当にあの男は。今日は自分の誕生日だっていうのに…わざわざ 働きに出るなんて…一体何を考えているんだ…」 こちらは十日ほど前にこいつの誕生日が、今日だと知った時から…その日は 盛大に祝うつもりで準備をしてきたのに…直前になって31日まで働くと聞かされた 時には、呆気に取られた。 しかし御堂もかつてはエリートコースを邁進していた仕事人間だ。 相手が仕事をすると言っているのに、自分との時間を優先しろだなんて…口が 裂けたってそんなみっともない事は言えない性分だった。 「…早く、帰って来い…。せっかく…用意、したんだぞ…」 午後七時、定時に終わった場合は…眼鏡が必ず帰って来る時間が近くなって ガラにもなく心臓がドキドキしていた。 作っている時は夢中で気にしなかったが…自分の方から手料理を振舞って 相手の誕生日を祝ってやるなんて行為は生まれて初めての経験だ。 そんな事を自分がやる日が来るなんて以前はまったく想像していなかったし… その相手が克哉である事も…信じられなかった。 用意した全ての料理が頃合に仕上がり、皿の上に盛り付けて…食卓の上に 二人分の用意を並べていく。 そして…本日、ガーヴから取り出して丁度頃合に冷えているシャンパンの用意を していく。 シャンパン・フリュートと呼ばれる全体的に細めで背が高い、スラリとした シルエットのグラスを二個用意した。 全ての準備が整い、時間を眺めていく。 午後七時まで後…1分を切ろうとしていた。 その時間になってまで、まだ帰って来る気配がない事に御堂は…少し不安を 覚えていく。 (もしかして…今日は遅れる、のか…?) 昨日も一昨日も、佐伯は七時までには確実に帰って来ていた。 それなのに…肝心の今日に限って、その気配はない。 せっかく一番美味しい状態で食べて貰おうと頑張っていただけに…普段なら 何でもない事でも、少し相手が遅れるのだろうかと考えるだけで落胆してしまう。 「…あいつに、限って珍しいな…」 ボソリ、と呟いた瞬間…ガチャと扉が開く音が聞こえた。 顔を上げると、時計の針は丁度ジャスト7時。 それと同時に…上質の黒いスーツとカシミアのコートを身に纏った眼鏡の 男が室内に入っていく。 「ただいま、御堂…。今夜も美味そうな料理を用意してくれているな…。 この匂いはビーフシチューか…?」 コートを脱いで、リビングのハンガーにつるしていきながら…自分をこれだけ やきもきさせた男は何でもない事のように、不敵な笑みを浮かべている。 「あぁ…そうだ。数日前から仕込んで用意してあったのを…今日完成させた。 多分、君が食べたら驚くレベルでの最上の仕上がりだ…。楽しみにすると良い…」 御堂もまた、先程までの不安を全て隠して…いつも通りの、強気な態度で 彼と会話を交わしていく。 「君は先に席に座っていてくれ。…今日は君が主役だ。私の方で全ての 準備をして…祝わせて貰いたい。良いな…佐伯?」 そうして、相手を歓待する為の準備を御堂は始めていく。 その間、彼の胸は…いつになく高揚し、早鐘を刻み続けていた― 御堂が用意したご馳走の全てを平らげていくと…克哉は満足げな笑みを 浮かべながら、讃える言葉を継げていった。 「今日の夕食は…本当に美味かった。お前がこれほどまでの味を作り出せる 腕前の持ち主とは知らなかったな…」 「…まあな。満足出来たか?」 「あぁ…大満足だ。お前の愛情がたっぷりと詰まっていたからな…」 「なっ…バカ、真顔でそういう事を言われると…どう反応すれば良いのか、 判らなくなる…だろ…」 御堂が赤くなりながら、拗ねた顔を浮かべていくと…克哉はククっと 喉の奥で笑っていく。 本当にこういう意地の悪い処は、困ったものだと思った。 「…素直に受けておけ。俺は…本当に思った事しか、言わないからな…」 「っ!!」 途端に、自分の耳まで赤く染まっていくのが判って、机をバンッ! と 叩きながら勢い良く椅子から立ち上がっていく。 「…どこに行くんだ?」 「…今日の為に用意しておいた、極上のシャンパンを…取ってくる。君の ような男に振舞うのが勿体無いくらいの一品だがな…」 御堂が本日用意したシャンパンの銘柄はクリュグ=「グランド・キュヴェ」 シャンパンの中のシャンパンとも言われている極上品である。 一本18000円から、20000円はする代物なので…一般のサラリーマンでは なかなか飲めない高級品だ。 御堂が優美な動作で…ソムリエナイフを使い、コルクを抜いていくと早くも 部屋中にシャンパンの芳醇な香りが広がっていく。 細長いフリュート型のシャンパン用のグラスに…程よく冷えた液体を注げば 綺麗な琥珀色の底の方から…細かい綺麗な泡が水面に向かって緩やかに 立ち昇っていく。 「…俺は基本的にビールや蒸留酒の類ばかり飲むのでシャンパンは初めてだが… 綺麗なものだな…」 「あぁ、この泡一つ一つが…芸術品みたいなものだ。味わって飲むと良い…」 二つのグラスに、慎重に液体を注ぎ終わると…相手の顔を深く覗きこむように しながら、手渡していく。 お互いの視線が、絡み合えば…御堂は相手の手に…己の手を重ね、先に 相手のグラスの液体を口に含んでいく。 克哉の目が柔らかく細められると同時に…唇を重ねて、相手の口内に 極上のシャンパンを送り込んでいった。 「ん…ふっ…」 甘い声を漏らしながら、相手の口腔に舌を忍び込ませて…やんわりと 熱い舌を絡ませあっていく。 鼻腔を突く、シャンパンの心地よい香りと…相手の唇の甘さに、それだけで 酔いしれてしまいそうだ。 「…美味いな。お前が用意してくれたシャンパンも…お前の唇の味も…」 「…だろう? 気に入ったか…?」 「あぁ、当然だ。これ以上の贈り物は…そうあるものじゃないからな…」 強気に微笑んだ克哉の腕が、御堂の腰に絡まっていくと…こちらからも 相手の首筋にぎゅっとしがみ付いていった。 眼鏡の視線がグラスの方に注がれているのに気づくと…強気な笑みを 浮かべながら、御堂がもう一度液体を口に含んで…相手の口腔に 注ぎ込んでいく。 そのまま…お互いの情熱に火が突いて、次第に抱きしめあう腕の力も 強まり、絡めあう舌の動きも性急なものへと変わっていった。 「さ、えき…今夜は、もう一つ…贈り物があるんだが、受け取って貰える、か…?」 声の振動が伝わるくらいの至近距離で、御堂が囁いていく。 「…これだけでも、充分だがな。…それで、何をくれるんだ…?」 お互いの熱に浮かされた眼差しが、ぶつかり合う。 相手の真意を読み取ろうと…ジっと克哉の怜悧で鋭い眼差しが 御堂の瞳の奥に注がれていった。 それだけで…御堂の背中には甘い痺れが走り、ゾクゾクと悪寒めいたものを 感じながら…甘い吐息と共に言葉を紡いでいく。 「…これを…」 ふっと瞳を細めて、克哉の左手を掬い取っていくと…その指先に口付けた。 丹念にその指先を唇で愛でて…チュっと小さくキスを落としていくと…己の スーツズボンのポケットに忍ばせていた銀色のリングを、そっと相手の指先に つけていく。 …そして、眼鏡が言葉を失っている間に…フッと不敵に微笑みながら 自分の指先にも同じようにシルバーリングをつけていった。 その間、克哉は何も言わない。 御堂からどんな言葉が紡がれるのか…真摯な表情を浮かべながら、 見つめていく。 そんな彼の表情が酷く愛しくて…ふっと、穏やかな笑みを浮かべながら 御堂は高らかに告げていく。 「…私のこれからの人生全てを、君に…」 そう告げながら、相手の唇に…深く深く口付けていった。 御堂からの思いも寄らぬ言葉と口付けを受けて、とっさに眼鏡は 反応出来ないでいた。 一瞬、何を言われたのか理解出来なかったという方が正しいだろうか。 それでも相手の唇と舌先の熱さに…次第にこちらも酔いしれていく。 こちらからも相手の身体をしっかりと抱きすくめていき…背骨のラインを 優しく指先で辿ってけば…御堂の身体が、ピクリと震えていく。 克哉の方からもたっぷりと御堂の唇を貪っていくと…珍しく、不服そうな 表情で…囁きを落としていった。 「…あんたの誕生日に、俺の方からプロポーズする予定でいたんだがな… 先を越されたか…」 「…ふふ、それは嬉しいけどな。しかし…今から私の誕生日まで、九ヶ月も 先じゃないか? それまで…お預けにするつもりだったのか…?」 御堂が挑発的に笑いながら、ゆったりとこちらの膝先に腰掛けていく。 身長180を超える男同士がこうやって密着しあう様はかなりの迫力だが… こちらとて、相手の体重が少し掛かったくらいで崩れる程、柔ではない。 「いや…そういう訳ではない。しかし…あんたは、本当にそれで良いのか…?」 「…今更、何を。確かに…一時はあんなに酷い真似をした君を憎んだ。だが… 私が壊れてからも君はずっと私の傍にいて面倒見てくれていたんだし…今は 心から想ってくれているのを実感している。 それとも、私の人生全てを押し付けられるのが重いというのか? それなら 撤回させてもらうけどな…」 「冗談じゃない。むしろ…大歓迎だ。だが…一度受け取ったら、絶対に俺の方からは あんたを手放してやったりはしないぞ? それでも…?」 「…むしろ手放したりしたら、盛大に君を恨ませて貰うぞ。私にここまで言わせて 受け取らない…何て事はないよな? 佐伯…?」 クスクスクス、と楽しげに笑いながら…御堂はこちらの唇を、ゆっくりと舌先で 舐め上げていく。 そのまま御堂の方から唇を重ねて、やんわりと吸い上げていくと…今度は 克哉の背中がピクリ、と震えていく。 お互いの吐息が、体温が徐々に熱を帯びてくるのが伝わってくる。 御堂の手が愛しげに克哉の頬に、首筋に触れ…カリ、と唇を甘噛みなんて されたらもう駄目だ。 降参だ、と訴えんばかりに…克哉は御堂の肩を掴んで、軽く唇を引き離しながら 余裕のない顔で告げていった。 「…御堂っ! もうこれ以上されたら…あんたをこの場で押し倒し兼ねない。 続きは、寝室で…」 「…私は、ここでしても…一向に構わないぞ…? 佐伯…?」 瞳を蟲惑的に細めながら、御堂が艶やかな声音で告げていく。 最上のシャンパンを唇移しで与えられて、それだけで酩酊しそうなのに… 更に御堂孝典という魅力的な存在まで、与えられたら…こちらは正気でなど いられる訳がない。 そうしている間に、御堂の手がゆっくりと克哉のボタンを一つ一つ…丁寧に 外し始めていく。 整った指先が、克哉の露になった首筋から胸元までゆっくりと撫ぜ擦って… 興奮して堅くなり始めた胸の突起を掠めていく。 「くっ…! 御堂…せめて、ソファー…に…」 「あぁ…私も、同じ事を…思って、いた…。最早…ベッドに移動する…時間すらも、 惜しい、からな…あっ!」 御堂の腰を抱きながら、どうにか食卓の椅子から立ち上がっていくと…互いの 身体を支えあうような形で性急にリビングの方へと身体を移動させていって、御堂を 黒革のソファの上に組み敷いていく。 御堂の頭の位置に、クッションが来るように身体の位置を整えていってやると… ふと、初めて御堂を抱いた時の記憶が脳裏を過ぎった。 (そういえば…御堂を初めて『接待』したのは、このソファの上でだったな…) あの時の自分と御堂の関係は、お世辞にも友好的とは言えなかった。 殆ど嫌がらせに近い感じでプロトファイバーの売り上げ目標値をメチャクチャな 数字に引き上げられて…それの抗議に行ったら、私を接待しろと言ってきたのだ。 当然、御堂はその接待をキッカケに優位に立つつもりだったのだろうが…その件に 関しては克哉の方が一枚上手で、薬で一服を持って身体の自由を奪い…近くに あったビデオで陵辱場面を録画した。 その事を思い出して、ふと…克哉の中に引け目が蘇っていく。 エリートコースを邁進して、誇らしげに生きていたこの人を…自分のエゴで追い詰め そして、一度は廃人にまで追い込んでしまった。 そんな自分が今でもこうして御堂の傍にいる事が許されて、相手はこれから先の 人生まで与えてくれようとしている。 それはまるで…夢のようで、逆にあまりに現実感がないように思えた。 「…どうした? 佐伯…? せっかくのお前の誕生日で…私がここまでしているのに 酷く浮かない顔をしている…じゃないか?」 「いや…少し思い出した、だけだ…。そういえばあんたを初めて抱いたのも… このソファの上、だったな…って思って…」 こちらが少し戸惑いを感じてしまっている事など、御堂にはお見通しだろう。 その言葉を聞いて…少しだけ御堂の眉間に皺が寄っていく。 確かに…克哉と初めて関係を持った時は、合意ではなく半ば騙されて強姦された ようなものだ。 あの時は克哉の事はむしろ嫌っていたし、あんな真似をしでかしたこの男を 絶対に許すものか…と憎んでさえいた。 「…そうか、君がさっきから非常にノリが悪いのも…心を通わせてから、なかなか 私を抱かないのも…罪悪感って奴が邪魔しているから…何だな…」 深く溜息を突きながら、御堂が身体を起こしていく。 その顔を見て…克哉の方は居たたまれないような顔をしていた。 そう、両思いになってから早二週間が経過しているが…その期間中に、二人が セックスした回数はたったの二回だった。 あの雪が鮮やかに舞っている中にキスした日と…十日ほど前の休日の前夜。 それ以外は仕事が忙しいを理由に、なかなか触れようとしなかったのだ。 「いや…そうだな。確かに…あんたに、俺は…罪悪感を抱いているな…」 だからこそ…先程の御堂の言葉を心から嬉しいと思う反面、本当に自分がこの人の 手を取って良いのだろうかという迷いが克哉の中に生まれていた。 こんなに及び腰になっているのなんてみっともないし、自分らしくないと思う。 しかし…今の克哉にとって、御堂はとても大切な存在だった。 もう二度と失いたくないし、あんな人形のような状態に戻したくないのだ…。 己の御堂に対する執着心やエゴが、また暴走する日が来るのではないか。 その恐怖心が…克哉を未だに竦ませていたのだ。 「…ったく! いい加減にしたまえ! いつまでそうやって…私の前で怯え 竦んでいるつもりだ!」 克哉の想いは、御堂にだって充分にわかっている。 その罪悪感があるからこそ、自分が壊れてもこの男は一年も自分の面倒を 見て決して離れなかった事ぐらい判っている。 しかしもう自分はとっくの昔に…二週間前に許したし、もう気にしていないと その間に何回も伝えて来ているのだ。 それでも…伝わりきっていない事に…御堂は焦れて、怒りすら覚えていた。 「私は…君にこれからの人生全てを捧げても構わないと考える程に… 君を想い、愛しているんだ! だからいつまでも…過去の罪に君も囚われるな! そんな事、私は一切望んでなんか…いないんだ!」 感情が昂ぶりすぎて、瞳にうっすらと涙すら浮かべながら…相手の襟元を 引っつかんで御堂は訴えていく。 相手の誕生日だからこそ、抑えようと少しは思ったが…一度、堰を切った 気持ちは留まらず、溢れてくるばかりだ。 「み、どう…」 克哉は、相手の真っ直ぐすぎる怒りと…想いを前にして、唇を震わせていく。 しかしその瞳の奥に宿る光は真剣そのものだ。 「私は…佐伯克哉を愛している。君をこれからの…生涯の伴侶として、 一生を歩んでいけたら…! それくらいの覚悟で私は先程…君に気持ちを 伝えた。…それは、佐伯。君にとって…単なる重荷でしか、ないのか? それとも…嬉しい事なのか、キチンと答えて欲しい…」 自然と、御堂の方から…今度は克哉の身体の上に乗り上げる形となった。 相手の腰に、己の身体を重ねて…お互いに吐息が伝わるくらいの近さで 見つめあう。 「…嬉しいに、決まっているだろ。…俺にとって、人生を賭けてまで 欲しい相手なんて…御堂孝典、あんた以外には存在しないんだ。 …最高の誕生日プレゼントだよ。だから…」 相手の目をまっすぐ見つめながら、御堂自身が己の薬指に嵌めた 銀色のリングをそっと口付けていく。 自分の指にも…同じ証が、今は輝いている。 結婚指輪というのは元々…継ぎ目のない円を心臓に一番近いとされる 薬指に嵌めることで、永遠不滅の愛を願うという処から生じている風習だ。 それをどんな想いで、御堂は贈ってくれたのか。 どれだけ強い気持ちで、今気持ちを伝えてくれているのか。 …克哉はしっかりとその想いを受け止めて…今度こそ迷いない声で告げていく。 「あんたを心行くまで…今夜は貪らせてもらう。あんたは、今夜から… これから先、ずっと…俺に人生を…捧げて、くれるんだろ…?」 「…あぁ、もう…私は、君のものだ。…だから、好きに…すれば良い。 …何をされても、今夜は…受け入れる、から…」 そんな甘い言葉を、愛しい人間に耳元で囁かれて…こちらも冷静でなど いられる訳がない。 「…くっ! 今夜のあんた、本当に…反則、過ぎるぞ…っ!」 そうして、自分の腰の上に乗り上げている御堂の身体をこちらからも 引き寄せて、荒々しくキスを施していく。 お互いに身体は燃えるように熱くなっていた。 もう、止められない。 そう確信しながら…二人は、噛み付くように…唇を重ねあっていった― 白銀の絆(後編)へ |