ミサ及び聖務日課の聖歌 


イントロイトゥス introitus〈入祭唱〉

 ミサ聖祭のはじめに、司祭たちが列を作って祭壇に向かうときに歌われるミサ固有文聖歌です。冒頭のことばによって、その祭日の内容(たとえばクリスマスとかレクイエムとかいったもの)が示されます。

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キリエ Kyrie〈哀れみの賛歌〉

 ミサ通常文聖歌の最初の曲。「キリエ・エレイソン、クリステ・エレイソン、キリエ・エレイソン」(主よあわれみたまえ、キリストよあわれみたまえ、主よあわれみたまえ)と歌われます。ラテン語に典礼文の中で、この賛歌だけはギリシャ語で歌われ、初期キリスト教時代の典礼の名残を留めています。

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グロリア Gloria〈栄光の賛歌〉

 ミサ通常文聖歌の2番目の賛歌。「グローリア・イン・エクシェルシス」(天のいと高きところには栄光)という司祭のことばではじまって、以下を聖歌隊が受け継ぎます。死者のためのミサ(レクイエム)などでは、この賛歌は歌われません。

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グラドゥアーレ graduale〈昇階唱〉

 ラテン語の「階段」に由来することばです。ミサ固有文聖歌のひとつ。

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アレルヤ alleluia〈アレルヤ唱〉

 『alleluia』は、ヘブライ語の「神をほめたたえる」という意味のことばに由来し、英・独ではハレルヤと発音します。歓喜の叫びとして、グレゴリを聖歌の中では特に装飾(メリスマ)的な旋律を与えられています。ミサ固有文聖歌のひとつ。

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クレド Creado〈信仰宣言〉

 ミサ通常文聖歌の中で〈グロリア〉に続きます。その冒頭のことば『Creado』は、「わたしは信じる」の意味を持ちます。グロリア同様、最初の一句が司祭によって唱えられ、以下聖歌隊に受け継がれます。

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オフェルトリウム offertorium〈奉納唱〉

 ミサ聖祭において、捧げ物を祭壇に供える(奉納の儀)ときに歌われるミサ固有文聖歌です。

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サンクトゥス Sanctus〈感謝の賛歌〉

 ミサ通常文聖歌の中で〈クレド〉に続きます。はじめに『Sanctus』(聖なるかな)を3回唱えるこの賛歌のことばは、旧約聖書の中のイザヤ書第6章3節にもとづいています。

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アニュス・デイ Agnus Dei〈平和の賛歌〉

 ミサ通常文聖歌の中で〈サンクトゥス〉に続く第5章の賛歌。「世の罪をのぞきたもう主の小羊……」ではじまり、「我らに平安を与えたまえ」と結ばれます。

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コムニオ communio〈聖体拝領唱〉

 ミサ聖祭において、信者が聖体(キリストの血と肉をあらわすブドウ酒とパン)を受けるあいだに歌われるミサ固有文聖歌です。

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イテ・ミサ・エスト Ite missa est

 「行け、集会は終わった」というミサ聖祭の最後のことば。「デオ・グラティアス Deo gratias」(神に感謝せよ)で終わる『ミサ』の名称は、元来、この最後の句に由来します。

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セクエンツィア sequentia〈続誦〉

 ミサ固有文聖歌のひとつ。ミサ通常文聖歌の〈アレルヤ〉のメリスマ的な旋律に、別の歌詞を当てはめることからはじまりました。中世の頃には多数作曲されましたが、現在は「怒りの日(Dies irae)−死者のためのミサ」「過ぎ越しのいけにえ(Victimae paschali)−復活祭」「聖霊よ、来たりたまえ(Veni Sancte Spritus)−聖霊降臨祭」「シオンよ、讃えよ(Lauda Sion)−キリストの聖体の祝日」「聖母哀歌(Stabat Mater)-聖母の七つの悲しみの祝日」の計5曲が、特定のミサのおりに歌われる以外は使用されていません。

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トロープス tropus

 グレゴリオ聖歌の定められた本来の典礼文の間に、その典礼文を修飾、補強する新しいことばを挿入し、それに新しい旋律をつけた聖歌の事です。例えば、ミサ通常文の「キリエ・エレイソン Kyrie eleiso」(主よ、あわれみたまえ)が「キリエ・フォンス・ボニターティス・エレイソン Kyrie fons bonitatis eleiso」(主よ、善の泉よ、あわれみたまえ)というように変化し、挿入された語句には新しい旋律がつけられます。

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メリスマ melisma

 グレゴリオ聖歌などの中で、1つの音節(シラブル:音声上の一単位、ひとまとまりの音の区切り)に多数の音符を当てはめて、長く引き延ばして装飾的に歌っていく唱法です。アレルヤ唱はその代表的なものです。

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聖務日課 Officium

 教会における時間ごとの祈りを聖務日課といいます。聖務日課は「朝課 Matutinum(夜の祈り)」「賛課 Laudes(朝の祈り)」「1時課 Prima」「3時課 Tertia」「6時課 Sexta」「9時課 Nona(小時課)」「挽課 Vespers(夕べの祈り)」「終課 Completorium(1日の最後の祈り)」からなり、ミサは一般的に賛課と1時課の間に行われます。

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イムヌス Hymnus

 「賛歌(賛美歌)」と訳されます。もともとは神や英雄をたたえるギリシア語に由来する言葉すが、狭い意味ではカトリック教会の聖務日課で歌われる、神を賛美する聖歌を指します。その特徴は韻文詩の1音節に1音符を付した旋律を、各節ごとに繰り返すことにあります。

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マニフィカト Magnificat

 新約聖書のルカ伝第1章46節から55節にもとづいて、「マニフェカト Magnificat(わが魂は主をあがめ奉る)」ということばではじまる聖母の頌歌(カンティクム)。聖務日課の晩課で歌われます。

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カンティクム Canticum〈頌歌〉

 歌詞を聖書からとったイヌムス風の聖歌です。聖務日課の基本的部分で、賛課では「ベネディクトゥス Benedictus」、晩課では「マニフェカト Magnificat」、終課では「ヌンク・ディミッティス Nunc dimittis」が歌われます。

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ミサ通常文 Missa Ordinarium

 ミサの中で唱えられる式文のうち、原則として1年間を通じて変わることのないもので、キリエ(哀れみの賛歌)、グロリア(栄光の賛歌)、クレド(信仰宣言)、サンクトゥス(感謝の賛歌)、アニュス・デイ(平和の賛歌)。

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ミサ固有文 Missa Proprium

 ミサの中で唱えられる式文のうち、クリスマスや復活祭などの特定の祝日に結びついて変化するもので、イントロイトゥス(入祭唱)、グラドゥアーレ(昇階唱)、アレルヤ(アレルヤ唱)またはトラクトゥス(詠唱)、セクエンツィア(続誦)、オフェルトリウム(奉献唱)、コムニオ(聖体拝領唱)。

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ア・カペラ a capella

 言葉の意味は「礼拝堂風に」。歴史的には、必ずしも「無伴奏」という意味に限定されません。広義には、無伴奏、または、楽器と声がまったく同じに動く楽曲を指し、狭義にはパレストリーナ様式のことをいいます。

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復合唱(二重合唱方式)

 ヴェネツィア楽派の音楽書法。合唱団を二手に分割して互いに歌いあわせたり、時には一緒に歌わせて対比を出したりするというもので、2つのオルガンと合唱席が互いに向かい合っているという、サン・マルコ大聖堂の特殊な構造に目を付けた、作曲家ヴィラールトが考案したといわれています。

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レスポンソリウム responsorium

 一般に「応唱」と訳されます。はじめは、先唱者によって唱えられる詩篇句に対して、会衆が応える折り返しを意味しましが、のちにはミサの聖書朗読に続くひとつの聖歌全体をさすようになりました。

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アンティフィオナ antiphona

 本来は独唱と合唱の掛け合いの意味ですが、後に以下の三つの意味で用いられるようになりました

  1. 詩篇や賛美歌(カンクティム)の前後で歌われる短い聖歌。
  2. 枝の主の日のミサの前などの、特定の祝日だけに歌われる叙情的な歌、及び聖母マリアの4つの交唱。
  3. ミサ固有文中の3つの聖歌(入祭唱、奉納唱、聖体拝領唱)

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ネウマ neuma

 中世の単旋律歌曲の記譜に使われた記号をネウマと呼びます。旋律の動きや演奏上のニュアンスを視覚的に占めそうとしたもので9世紀頃からグレゴリア聖歌などの用いられはじめました。
 初期には旋律の上行、下行の動きを線の上下で図示するだけのもので、音の高さや音程を正確に表すものではありませんでした。それが、11世紀頃から同じ高さの音符を同じ線上に揃えてしるす方法が一般的になり、13世紀頃から4本線に角形の音符を記入する、現在の楽譜によく似た角形ネウマが使用されるようになりました。
 ローマ・カトリック教会のグレゴリオ聖歌は、角形ネウマによって記譜されています。

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単旋律 monophony

 伴奏のない、ひとつの旋律だけで出来た音楽を単旋律と言います。monophonyという用語は、ギリシャ語の《monos(単一の)》と《phonos(声)》に由来します。
 単旋律の代表的なものとしては、グレゴリオ聖歌やアンブロジオ聖歌、モサラベ聖歌、投法教会聖歌などの各種典礼音楽があげられます。

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テ・デウム Te Deum

 カトリック教会の主日(日曜日)及び日曜日の聖務日課の朝課において、その終わり近くで歌われる散文の賛歌。または行列聖歌や感謝の賛歌としても歌われます。最初の句の Te Deum laudamaus は「汝、神を我等はほめ奉り」の意。
 伝説によれば4世紀後半に聖アンブロシウス(339?-397)が聖アウグスティヌス(354-430)に洗礼を授けた折りに、霊感を得た二人が、どちらかともなく一句ずつ交互に歌ったものとされています。
 中世以来、主日祝日の聖務日課の朝課(夜明けのお務め)などの中で歌われていますが、17世紀から18世紀にかけて、特別な機会に神に感謝を捧げるための国家的な慶祝行事の音楽として、多くの作曲家によってトランペットやティンパニを伴う華やかな多声楽曲として作曲され、特に戦勝や講和条約の締結などの式典のために演奏されました。
 

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コンドゥクトゥス conductus

 12〜13世紀の宗教的内容を主とする声楽曲の一種。初期のものは単声で、さまざまな儀式で行列を導く時に歌われました。
 ノートル・ダム楽派ではテノール部分に新作の旋律が置かれ、全声部がほとんど同じリズムで進行する、歌詞の1音節に1音が割り当てられる、シラビックな多声歌曲になりました。宗教的声楽曲であるにもかかわらず、テノールにグレゴリオ聖歌などの既存の聖歌の旋律を使用しない点が特徴的です。

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モテット motetus

 13世紀後半に表れた多声音楽の曲種のひとつ。最下声部(テノール)にグレゴリオ聖歌の断片を定旋律(素材)としておき、上声部はそれぞれ細かいモドゥス・リズム(持続的に反復される、ある一定の型を持ったリズム)で歌っていきますが、その際、上声部は定旋律とは異なった歌詞を歌います。
 聴衆にとっては、歌詞が聞き取りにくい歌ですが、上声部の歌詞は定旋律のグレゴリオ聖歌の歌詞の内容を注釈するものであり、象徴的な意味を持っているので、聞き取ることを第一義とはしない曲であると言えるでしょう。

 同じモテットの名で呼ばれていますが、時代によって演奏様式は微妙に異なっています。
 ジョスカン・デ・プレ以降のルネサンス時代のモテットは、各声部が平等に模倣(先行する声部の旋律が一定の間隔をおいて他の声部に再現する音楽書法)をする、通奏模倣様式と呼ばれる方法によって作曲された4声〜6声のラテン語の典礼楽曲を意味するのが普通です。
 バロック期に入ると器楽伴奏つきの独唱者のためのモテトゥスも現れ、次第に多様化していきました。バッハのモテットの場合は、独唱者を加えずに合唱のみで演奏される楽曲を意味しています。

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