中世の音楽 


ネウマ neuma

 中世の単旋律歌曲の記譜に使われた記号をネウマと呼びます。旋律の動きや演奏上のニュアンスを視覚的に占めそうとしたもので9世紀頃からグレゴリア聖歌などの用いられはじめました。
 初期には旋律の上行、下行の動きを線の上下で図示するだけのもので、音の高さや音程を正確に表すものではありませんでした。それが、11世紀頃から同じ高さの音符を同じ線上に揃えてしるす方法が一般的になり、13世紀頃から4本線に角形の音符を記入する、現在の楽譜によく似た角形ネウマが使用されるようになりました。
 ローマ・カトリック教会のグレゴリオ聖歌は、角形ネウマによって記譜されています。

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単旋律 monophony

 伴奏のない、ひとつの旋律だけで出来た音楽を単旋律と言います。monophonyという用語は、ギリシャ語の《monos(単一の)》と《phonos(声)》に由来します。
 単旋律の代表的なものとしては、グレゴリオ聖歌やアンブロジオ聖歌、モサラベ聖歌、東方教会聖歌などの各種典礼音楽があげられます。

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トルバドゥール troubadour

 南フランスを中心に、12世紀後半から13世紀に活躍した中世の詩人兼音楽家。宮廷風の愛、十字軍、政治・宗教への風刺などを主要テーマとした歌曲を多数作曲しました。言語はラング・ドック(オック語)と呼ばれるフランス南西部のことばが使用され、2600余りの詩と260曲ほどの旋律が現存しています。

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トルヴェール trouvere

 北フランスを中心に、12世紀後半から13世紀に活躍した中世の詩人兼音楽家。トルバドゥールの影響を受けて発達しました。言語は現在のフランス語のもとになったラング・ドイル(オイル語)を使用。4000余りの歌詞が現存しており、そのうち2100ほどに旋律が付されています。

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ミンネゼンガー Minnesanger

 12世紀中頃から14世紀に活躍した、中世ドイツの詩人兼音楽家。中世騎士の女性への奉仕的な愛(ミンネ)を主要テーマとする歌曲の作曲を行いました。詩は多く残されていますが、旋律付きのものは少ないようです。

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ノートル・ダム楽派 repertory of Notre Dame

 12世紀半ばから13世紀半ばにパリのノートル・ダム大聖堂を中心に活躍した多声音楽の楽派。その周辺教会での音楽活動も含むとの見解から“パリ楽派”とも呼ばれます。オルガヌムコンドゥクトゥスモテットなどの多声音楽の展開に大きく寄与しました。代表的な音楽家にレオナン(レオニウス)、ペロタン(ペロティヌス)があります。

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オルガヌム organum

 中世の多声声楽のもっとも初期の形態。9世紀の初期のオルガヌムの多くは、定旋律(素材)となるグレゴリオ聖歌に4度または5度で平行進行する旋律をひとつ付加したものですが、ノートル・ダム楽派になると、声部の数も3声や4声に増し、全声部が一定の規則的なリズムで歌い続ける大規模な作品があらわれるようになります。

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クラウスラ clausula

 11世紀から15世紀に、楽曲の終止をさす用語として使われました。語義は「終結」あるいは「句」です。
 
ノートル・ダム楽派オルガヌムにおいては、ディスカントゥス様式の明確な終止をもつ部分がこの名で呼ばれ、やがては独立した楽曲として扱われるようになりました。また、クラウスラの上声部に歌詞を付けたものからモテトゥスが発展しました。

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ディスカントゥス discantus

 オルガヌムなど、テノール(最低声部)に聖歌の定旋律(素材)を持つ多声楽曲の様式で、テノールとほぼ同じペースで他の声部が進行する形式のこと。多声音楽の最上声部もディスカントゥスと呼ばれます。

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イソ・リズム(アイソリズム) isorhythm

 14世紀から15世紀初頭の多声音楽で用いられる作曲技法。定型反復リズムで、テノール声部(最低声部)を、一定のリズム・パターン(タレア)と高音パターン(コロル)の反復で構成するものです。その際、タレアとコロルの反復周期は必ずしも一致しません。両者の反復期をずらすことで、旋律が常に新しい装いで登場するように感じさせることができます。

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バラータ(バッラータ) ballata

 14世紀イタリアの、詩と音楽の重要な形式のひとつ。本来は踊りの伴奏をする歌で、動詞ballare(踊る)に由来します。基本的な音楽形式はABBAAで、初期は単旋律ですが、1340年代以降は多声のものが一般的になりました。代表的な作曲家にフランチェスコ・ランディーニがいます。

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マドリガーレ madrigale

 イタリアの世俗声楽曲の一分野。本来は文学用語で、イタリア語詩の形式のひとつでした。音楽分野のマドリガーレは、14世紀のマドリガーレと、16世紀から17世紀前半のそれとに大別されます。
 14世紀のトレチェント音楽のマドリガーレは、マドリガーレ詩に作曲された、通常は2声の世俗声楽曲を指します。音楽上の形式も詩の形式と合わせられており、3行連を2ないし3つ繰り返したあとに1行か2行の反復句が着くことから、a+a+(a)+b の形式となっています。

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カッチャ caccia

 14世紀イタリアの世俗声楽曲の一形式。語義は「狩り」。描写的な歌詞と2つのカノン声部を特徴とします。主に1345年から70年頃までに盛んに作られ、代表的な作曲家にはヤコポ・ダ・ボローニャがいます。

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バラード ballade

 13世紀から15世紀フランスの歌曲定型のひとつ。プロヴァンス語のbalar(踊る)を語源としています。宮廷風の恋愛を主要主題としており、音楽はaabまたはaabCの形を基本として、13世紀末から多声作品が出現します。

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ヴィルレー virelai

 13世紀から15世紀フランスの歌曲定型のひとつ。名称は古フランス語のvirer(回転する)に由来し、舞踏と結びついています。AbbaA(大文字は反復句、同じ文字は同じ旋律)形式を基本として、大半は宮廷風恋愛が歌われますが、狩りや戦いを模した写実的な作品もあります。多くは単旋律で、多声作品も複雑な形式はみられません。

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ロンドー rondeau

 13世紀から15世紀フランスの歌曲定型のひとつ。ラテン語のrotundettum(円)を語源とし、本来は踊りに合わせて歌った歌でした。ABaAabAB(大文字は反復句、同じ文字は同じ旋律)が基本形式で、宮廷風恋愛を主題にするものが一般的ですが、宗教劇の音楽にもこの形式が見られます。
 15世紀には、もっとも人気のある形式となり、デュファイやバンショワらが多数の作品を残しました。

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レー lai

 13世紀から14世紀の物語詩のレーは、長編の叙事詩的物語から滑稽譚まで、多岐の主題に及ぶ文学ジャンルを指しますが、歌われるレーは、別名デコールとも呼ばれ、恋愛などを主題にした12詩節以下の比較的短い歌を指します。

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モード・リズム modal rhythm

 13世紀のポリフォニー音楽(オルガヌムクラウスラモテトゥス)に用いられたリズム体系。
 6種類のリズム体系(リズム・モード)を基礎とし、そのいずれかを一定のフレーズの間で間断なく繰り返すことで楽曲が構成されています。

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モテトゥス motetus

 13世紀後半に表れた多声音楽の曲種のひとつ。最下声部(テノール)にグレゴリオ聖歌の断片を定旋律(素材)としておき、上声部はそれぞれ細かいモード・リズム(持続的に反復される、ある一定の型を持ったリズム)で歌っていきますが、その際、上声部は定旋律とは異なった歌詞を歌います。
 聴衆にとっては、歌詞が聞き取りにくい歌ですが、上声部の歌詞は定旋律のグレゴリオ聖歌の歌詞の内容を注釈するものであり、象徴的な意味を持っているので、聞き取ることではなく、演奏することを第一義とした曲であると言えるでしょう。

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ラウダ lauda

 中世イタリアの民衆的伝統に属する非典礼的な宗教詩及び歌曲のこと。意味は「鑚仰(さんぎょう:聖人の道やその徳を深く研究し、とうとぶ)歌」。
 アッジシの聖フランチェスコ(1181/2-1226)作のラウダ「太陽賛歌 Carmen solis」に象徴される、イタリアの新しい伝道活動に結びついた、民衆的な宗教的歌曲です。社会の動搖や黒死病(ペスト)の流行などによって鞭打派 flagellanti の運動が広まるに連れ、ラウダは彼らの賛美歌として機能するようになりました。
 通常はイタリア語ですがラテン語によるものもあります。当初は単声で、信者や改悛者によって行列の際などに歌われましたが、鞭打派が衰退した後もラウダは行われ、15世紀末から16世紀にかけては多声のラウダも生まれました。

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