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6 ヘンデル「合奏協奏曲集Op.6」(HWV.319−330) (Handel:Concerto Grosso Op.6(HWV.319-330)) ヘンデルの「合奏協奏曲集Op.6」は、ヘンデルの曲の中ではどちらかといえばマイナーな曲ではないかと思います。ヘンデルの曲といえば「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」「オラトリオ《メサイア》」というところが一般的で、合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)をあげる人はあまり多くはないような気がします。 私自身、「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」は嫌いではありません。ヘンデルらしい華やかさとおおらかさに溢れていて、聴いていてとても楽しくなってきます。 それでも、私が一番多く聴くヘンデルの曲はなぜか「合奏協奏曲集Op.6」なのです。全部で12曲のこの曲集を、全曲通して聴くことこそ稀ですが、ヘンデルの曲を聴きたいと思うときに、一番に手が伸びるのが作品6のコンチェルト・グロッソ集なのです。 だから、「合奏協奏曲集Op.6」は、私のヘンデルでは一番のお気に入りの曲、と言って良いと思います。 ヘンデルは、Op.3とOp.6の二つの合奏協奏曲集を残していますが、そのうち、Op.6の合奏協奏曲集は、1739年の9月29日から10月30日までの一ヶ月足らずの期間に連続して作曲され、『12曲のグランド・コンチェルト』のタイトルで翌年4月にロンドンで出版されたものです。 合奏協奏曲は、バロック時代の協奏曲の最も重要な形式のひとつです。コンチェルティーノと呼ばれる独奏楽器群とリピエーノと呼ばれる合奏からなり、コレルリの作品に典型的な実例を見ることができます。 ヘンデルのOp.6の様式は、コレルリの影響を思わせるスタイルで、楽章も4〜6楽章と多く、楽器の組み合わせも様々ですが、独奏楽器群は二つのヴァイオリンと通奏低音楽器の組み合わせという、標準的なものが多いようです。 また、12曲のうち、第1,2,5,6番は、出版に先立って「オラトリオ《聖セシリアの日の頌歌》」と「セレナータ《アチスとガラテア》」の幕間音楽として演奏されました。 ところで、Op.6の録音は、モダン楽器のものからはじまって、古楽器のものも含めて様々な録音が出ていますが、まだ、決定的な名演というのは出ていないような気がします。 例えばグールドの「ゴルトベルク変奏曲」やリヒターの指揮によるバッハのコラールや受難曲、イ・ムジチの「四季」などは、どんな人でもこれらの曲を紹介するときには、大なり小なり推薦するだろう演奏です。しかし、ヘンデルのOp.6については、そのような演奏が見あたらないような気がするのです。 ですから、Op.6の録音を選ぶ場合には、“自分がどんなヘンデルを聴きたいと思っているのか”、ということが、重要な選択肢になるのではないでしょうか。 私の場合は、ヘンデルのOp.6は、バッハの「ブランデンブルグ協奏曲」ほどの緻密な構成力が無い変わりに、おおらかな力強い音の流れと開放感に満ちた、ゆったりとした叙情的で牧歌的な音楽であると思っています。そこから、私が選ぶ演奏は、軽すぎず、かといってアクセントの強すぎない、どちらかといえばテンポのゆったりした、静かな感じの録音が主になっていきます。 私が一番多く聴く録音は、コレギウム・アウレウム合奏団の演奏のものです。75年の録音で、古楽器による録音としては初期のものになりますが、遅めのテンポで、古楽器のひなびた響きを聴かせてくれます。ゆったりとした、柔らかい雰囲気がありながらも、要所要所で力強さが感じられた、私が持っている中では、一番落ち着きがある“渋い”録音です。 次に来るのが、ホグウッド指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティの録音でしょうか。ホグウッドらしい、バランスの取れた、知的で生気に満ちた演奏です。 ピノックとイングリッシュ・コンソートのOp.6は、古楽器の響きと艶やかな音色が美しい録音です。堂々と力強く、伸びやかで優美な、現代的なOp.6の代表例だと思います。ただし、私の好みとしては、もう少し甘さというか、晴れやかさが欲しい気がしなくもありません。 上記の3種類の録音とはちょっと毛色が違いますが、トン・コープマン指揮のアムステルダム・バロック・オーケストラのOp.6は、起伏に富んだ豊かさが魅力で、なんとなく心引かれるものがあります。コープマンらしい引き締まった表情と、エネルギーに溢れたさわやかさも併せ持った、強い説得力が感じられます。かといって、アーノンクールほどの凄まじさはなく、スリリング、ということばが一番ぴったりする演奏かもしれません。 好きな演奏というほどでは無いのですが、参考盤として、リヒター盤とアーノンクール盤についての私見を述べておきます。 リヒター指揮のミュンヘン・バッハ管弦楽団のOp.6[POCA-2054/7(廃盤) ※輸入盤:Archiv/453249]は、モダン楽器による演奏です。メリハリのきいた、ややアクセントの強い、厳しい音楽としてOp.6を演奏しています。 アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス[WPCS-6020/3]は、どの曲もテンポが速く、極めてリズミックでアクセントのきつい、表情の変化の激しい演奏をしています。意志的で力強い、凄まじささえ感じさせます。 いずれにしても、どんな録音を選ぶにしろ、自分の聴きたいヘンデルの音楽に従って、指揮者と演奏者を選んで聴くのが、一番妥当な選択方法ではないでしょうか。アーノンクールが良いというのも、わからなくは無い意見ですから。 (1998/7/27)
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