2 デイヴィッド・マンロウ指揮/ロンドン古楽コンソート
   (David Munrow/The Early Music Consort of London)


 最近では、中世・ルネサンス期の音楽にしろ、バロック期の音楽にしろ、当時の楽器またはそのレプリカを使っての演奏が一般的になりつつありますし、演奏団体も増えて来ました。

 それと同時に、以前なら、音楽史の記述の中に僅かに作曲者や曲名が載っているだけで、どんな曲かもわからなかったものが、ずいぶんたくさん録音され、家庭でも聴けるようになってきました。そして、演奏技術の向上も、録音のすばらしさも、目を見張るものがあります。

 それでもなお、録音されてから何十年を経てさえも、いまだにスタンダードな存在として、忘れられない古い録音と演奏者が存在します。

 私にとってのそれは、リヒターの指揮によるバッハのカンタータであり、デイヴィド・マンロウ指揮のロンドン古楽コンソートによる、中世・ルネサンス期の音楽や、グールドの演奏するバッハのゴルトベルク変奏曲ということになります。

 リヒターやグールドについては、また後日と言うことにして、今回はマンロウについて書いてみたいと思います。


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 彼は、1942年8月12日にイギリスのバーミンガムで生まれ、1976年5月15日にバッキンガム州チェザム・ボイズで、わずか33歳で没した、イギリスのリコーダーなどの各種木管古楽器の演奏者です。

 キング・エドワード学校を卒業後、南米のペルーで教職を勤め、1年に帰国し、1961〜64年ケンブリッジのペンブルック大学に学び、同大学で古楽アンサンブルを結成して演奏活動をはじめ、ついでバーミンガム大学で17世紀の音楽を研究し、まず、ブロック・フレーテ(リコーダー)の奏者として活躍しました。

 1967年以降、レスター大学やロンドンの王立音楽院でブロック・フレーテの指導に当たると同時に、カウンターテノールのジェイムズ・ボウマンやハープシコード奏者のクリストファー・ホグウッドらとともにロンドン古楽コンソートを結成し、中世・ルネサンス期の作品を中心に、多彩な活動を行いました。


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 従って、ロンドン古楽コンソートの実質的な活動はわずか9年間であり、レコードもそれほど沢山はありません。それでも、その録音の全てが中世・ルネサンス期の音楽の録音として、現在もトップに君臨するものになっています。

 その中でも、私が特に素晴らしいと思うのは、「十字軍の音楽」と「ゴシック期の音楽」の二つです。両方とも、中世期の音楽のオムニバスとして、現在もなお、他の追随を許さない存在だと思います。

 中世の音楽をほぼ俯瞰する事が出来る、その選曲の良さも優れたものですが、それ以上に、いつ聴いても新鮮な音が、その演奏からは聴かれます。同じようなリズムの繰り返しが多く、一歩間違えば退屈になってしまいそうな中世の曲を生き生きと歌わせて、素晴らしい音楽に仕上げているのです。


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 古楽の中でも特に中世の曲は、リズムや音程などがはっきりしていなかったり、どんな編成で演奏されたのかもわからないものが多い分、演奏者の想像力や創造力を駆使した演奏が必要になります。

 そして、演奏者の「創作」があまりにも行きすぎた場合、その録音は確かに面白くはあるのですが、少しくどかったり、どこか落ち着きのないものになります。逆に、あまりにも「再現」にこだわると、少しも面白みのない演奏になってしまうことも多いのです。

 その点、デイヴィド・マンロウとロンドン古楽コンソートは、充分に現代的な解釈を盛り込みつつ、決してやりすぎるということのない、素晴らしい演奏をその録音から聴かせてくれます。


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 マンロウの死後も、多くの古楽団が誕生し、すばらしい演奏を聴かせてくれています。それでも、マンロウの指揮したロンドン古楽コンソートほど、心を揺すぶられるような、聴いていて幸せだと感じさせる録音は、そうそうお目にかかれないのは何故でしょうか?

 さすがに作品の解釈は、古さを感じさせるかもしれません。けれど、録音から20年以上たってなお、彼らの作り出した音楽は、色あせることを知りません。

 ホグウッドやボウマンなど、参加していたそれぞれの奏者の腕が一流であるのはもちろんですが、何よりも、彼らを指揮したマンロウの意志が、録音の全てに息づいているからこそ、彼らが残した録音は聴く者を捕らえて離さないのではないでしょうか。


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 自分のやりたいことを明確につかみ切った者の確かさが、彼らの演奏を特別なものにしています。

 現代を根底に息づかせながら、古楽としての骨格を壊すことのないその録音を聴く度に、早世した天才を惜しんで止みません。

(1998/5/10)


デイヴィッド・マンロウ/ロンドン古楽コンソート
David Munrow/The Early Music Consort of London
 十字軍の音楽 MUSIC OF THE CRUSADES
  1970年録音 LONDON(ポリグラム) [POCL- 2872]
 ゴシック期の音楽 MUSIC OF THE GOTHIC ERA
  1975年録音 ARCHIV(ポリグラム) [POCA- 2098/9]

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