|
2001年7月4日(水)19:00開演
千成千徳 Sigenori Sennari [ヴィオラ・ダ・ガンバ]
ヴィーラント・クイケンと千成千徳(せんなりしげのり)によるヴィオラ・ダ・ガンバのデュオ・リサイタルに行きました。ヴィオラ・ダ・ガンバ自体は、ルネサンスやバロックのピリオド(オリジナル)楽器によるアンサンブルならば、ほぼ100%の確立で存在する楽器なので、それほど珍しい楽器ではないと思いますが、さすがにデュオによる演奏というのは、実演は今回が初めての経験でした。 ヴィーラント・クイケンは、オーセンティックな古楽運動の先駆者として名高いクイケン3兄弟の長兄です。1938年にベルギーで生まれ、ブリュージュ及びブリュッセル音楽院でチェロを学びますが、在学中に興味を持ったヴィオラ・ダ・ガンバの奏法を独学で身につけた事で知られています。現在、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏に携わっている人たちは、多い少ないの違いはあるものの、何らかの形でヴィーラント・クイケンの影響を受けていると言って良いのではないでしょうか。
今回のプログラムは、ヴィオラ・ダ・ガンバの作品が100年の間にどのように変わって行ったかを、1600年代前半のクリストフアー・シンプソンから始まって、1700年代前半のクリストフ・シャフラート作品まで、年代順に並べた「耳で聴く音楽史」的なものでした。その上、ヴィオラ・ダ・ガンバの2重奏というのは録音も多くはないので、今回初めて聴いた曲、または、録音でも聴いたかもしれないけれど覚えていなかった曲が多くて、かなり興味深い演奏会でした。 最初のクリストフアー・シンプソンのディヴィジョン2曲は、単純な音形の繰り返しながら、歯切れの良い気の利いた小品で、アマチュアでも充分に演奏を楽しめそうな曲のような気がしました。その後の、マシュー・ロック、サント・コロンブ、フランソワ・クープランの曲は、ヴィオラ・ダ・ガンバの魅力を十分に引き出した最盛期の素晴らしい2重奏だったと思います。 ところで、ジョセフ・ボタン・デ・ボアモルティエとクリストフ・シャフラートの、バッハ後の『多感様式』のヴィオラ・ダ・ガンバ2重奏というのは、今回初めて聴きました。いかにもこの時代の『疾風怒濤』というか、名人芸がこれでもか、と盛り込まれたとても面白い曲でした。でも、曲の雰囲気からすると、ヴィオラ・ダ・ガンバよりはチェロで弾くように指示した方が、作曲家の意図する熱狂的な雰囲気を表現できただろうに、と思えたのですが、どうして作曲家はヴィオラ・ダ・ガンバを選んだのかしら、と思ったりもしてしまいました。 演奏会全般については、師弟間の息のあった、ほのぼのとした演奏だったと思います。ヴィーラント・クイケン氏も千成千徳氏も肩の力が抜けた、非常に伸び伸びとした演奏で、ただ聴いているだけでも演奏することの楽しさが伝わってくるような、そんな印象を強く受けました。演奏者と客席が近いことや、千成氏の知人や教え子などが聴衆に多かった事も影響しているのでしょうが、ホームコンサート的な雰囲気が端々に感じられました。 演奏会の白眉は、千成氏が高校時代の友人や恩師への追悼の気持ちを込めて弾いた、サント・コロンブの「コンセール 第44番」だったと思います。非常に情感もたっぷりとしていて、いかにも「追悼曲」にふさわしかったと思いました。サント・コロンブのコンセール2曲は続けて弾かれたので、「コンセール 第48番 装い」も、少しばかり「追悼曲」雰囲気を引きずった感じもありましたが、柔らかで暖かみのある素晴らしい演奏でした。 会場についても一言。今回のコンサートがあった札幌ザ・ルーテルホールは、札幌市のど真ん中の大通り公園にほど近い小ホールです。2階席は無いものの、Kitaraの小ホールよりも若干横広がりで、座席も多いように見受けられました(何席あるか確認しませんでしたが)。ホールの音響は壁ぎわの席は別としても、Kitaraの小ホールより全般的に音が柔らかく響くようで、ピリオド楽器やモダン楽器の小編成の演奏だと、かなり聴きやすいホールではないかと思いました。ただ、イスの配置と床面の角度の関係から、前方2列目から5列目くらいまでは舞台の上で坐っている人間が見づらいのが、難点と言えば難点のような気がします。あとは、会場前にホールに行った場合に休憩するところが無い所などが、Kitaraを使い慣れるているとせいで少しばかり不便に感じました。でも、全般的に良いホールだったので、機会があればまた聴きに行きたいです。 (2001.07.20)
| ||||||||||||||||||||||