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[第一夜]2001年2月27日(火)19:00開演
世界を代表するチェロ奏者、鈴木秀美氏の《バッハ/無伴奏チェロ組曲全曲演奏会》に行きました。バロック・チェロはこれまでも何度か実際に聴いたことはありましたが、バッハの《無伴奏チェロ組曲》のバロック・チェロでの実演は初めてだったので、とても楽しみにしていたのですが、期待どおりの素晴らしいコンサートで、とても嬉しかったです。 鈴木秀美氏は「バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)」を主催する鈴木雅明氏の弟で、桐朋学園大学で学び、第48回日本音楽コンクール第1位、第27回海外派遣コンクールでも特別表彰を受けています。在学中からバロック・チェロの演奏をはじめ、1984年文化庁在外研修員としてハーグ王立音楽院に留学し、アンナー・ビルスマに師事しました。1986年にパリで行われた第1回バロック・チェロ・コンクールでは、第1位(2,3位なし)にとなっています。
今回のKitaraでの《無伴奏チェロ組曲》のコンサートは、バッハ・イヤーの締めくくりとしての意味合いもあり、札幌コンサートホール(札幌市芸術文化財団)の主催で行われました。小ホールに入ってまず目に入ったのは舞台上に天井付近から下げられていた大きな布で、アンナ・マクダレーナ・バッハが写譜をしたという、《無伴奏チェロ組曲》の楽譜がコピーされていました。シンプルながら、とても効果的な舞台装飾だったと思います。 秀美氏の無伴奏のCDは、あまたある同種の録音の中でも1、2を争うほど好きの録音で、何度も聴いているのですが、今回実演に触れてみると、やはり、その迫力の違いに驚かされました。録音でも、師匠のビルスマ譲りの舞曲そのもののテンポの良さが際立っていましたが、実演はそれよりももっと自由奔放な感じで、舞曲の種類によってテンポや弾き方などが、録音とはかなり変えられていたのも印象的でした。 特に各組曲のサラバンドで聴かせた、まるでチェンバロのイネガル奏法のような不均等な奏法は、CDでも聴き取ることが可能ですが、実演のほうがより強いインパクトがありました。スラーのかかり方も、CDとは微妙に違っていたようで、録音よりももっと融通無碍といった感じがする演奏だったと思います。 2日目の最後の第6番は、バッハが考案したとも言われる、現在に伝わっていない“ヴィオラ・ポンポーザ”という特殊なチェロのために書かれたいて、他の5曲より音域が高く設定されていますが、鈴木秀美氏はバッハの想定した楽器にもっとも近いと思われる小型の5弦の“チェロ・ピッコロ”で演奏していました。さすがに、モダン・チェロで編曲して演奏されたものよりも自然な響きでしたが、5弦であっても、6番を弾くのは大変そうだという印象がありました。本当に6番は難しい曲ですね。 一曲ごとに調弦する様子や、弓の状態を慎重に確認する様を見ていると、ガット弦のバロック・チェロでの演奏というのは、本当に大変なんだと思わされました。それでも、3番のプレリュードの駆け巡るような音の連なりは、モダン・チェロの演奏では聴くことの出来ない、バロック・チェロ特有の軽やかさがあったと思います。 アンコールは、バッハの曲のあとにはバッハしか聴くものは無い、という鈴木秀美氏の言により、1日目は次の日の予告編もかねて第4番のサラバンドを、2日目にはチェロ・ピッコロの音程にあわせて《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》第3番からラルゴが演奏されました。特にチェロ・ピッコロによるラルゴは、ヴァイオリンよりちょっと低めの音程ながら、編曲とは感じさせないほど自然な曲想での演奏でとても感激してしまいました。 今回は、1日目は比較的早いテンポ奇数番号曲、2日目はゆったりした偶数番号曲という構成のコンサートでしたが、2日間とも、聴いていてとても幸せで収穫の多いコンサートでした。ただ、会場が満席には程遠かったことことが、唯一、心残りな点でした。1日目はまだしも、2日目は7割くらいしか客席が埋まっていなかったのは何故だったのでしょうか。演奏自体も1日目よりも2日目の方がより音がはっきりと聴こえて、感動的だっただけにとても残念な事だったと思います。 1日目も2日目も終演後にサイン会があったのですが、2日とも持ち帰りの仕事があったので残念ながら参加することが出来ました。お話ができないまでも、握手なりとさせていただきたかった、と今更ながらに思っています。 (2001.03.18)
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