トン・コープマン&アムステルダム・バロック・オーケストラ
バッハ ブランデンブルグ協奏曲全曲演奏会

2000年10月10日(火)19:00
札幌コンサートホール《Kitara》大ホール

    指揮:トン・コープマン Ton Koopman
    管弦楽:アムステルダム・バロック・オーケストラ The Amsterdam Baroque Orchestra


 

J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲
Johann Sebastian Bach:Die Brandenburgische Konzerte

 第1番 ヘ長調 BWV1046
 Nr.1 F-dur BWV1046
 第5番 ニ長調 BWV1050
 Nr.5 D-dur BWV1050
 第3番 ト長調 BWV1048
 Nr.3 G-dur BWV1048


  ―――――休憩15分―――――


 第2番 ヘ長調 BWV1047
 Nr.2 F-dur BWV1047
 第6番 ロ長調 BWV1051
 Nr.6 B-dur BWV1051
 第4番 ト長調 BWV1049
 Nr.4 G-dur BWV1049



トン・コープマンとアムステルダム・バロック・オーケストラによるバッハの「ブランデンブルグ協奏曲全曲演奏会」は、今年Kitaraで企画されたオランダ・イヤーの最終回として、また、バッハ没後250年企画のひとつとして、大ホールで10月10日に行われました。東京や大阪では今年は沢山のオリジナル楽器オーケストラの演奏会があったと思いますが、札幌では今年はこれひとつのようなので、とても楽しみにしていました。お客さんの入りは7割程度でしたが、とても素晴らしいコンサートだったと思います。

アムステルダム・バロック・オーケストラは1979年にトン・コープマンによって結成された、オリジナル楽器によるオーケストラです。世界中で年間40回以上に及ぶコンサートを行い、コープマンと共に仏エラート・レーベルに数々のバロック音楽の録音を行っています。その録音は、世界中の音楽雑誌で常に高い評価を受けており、オリジナル楽器による常設オーケストラとしては、第一級の団体のひとつです。

実のところ、7時開演のコンサートでブランデンブルグ協奏曲を全曲演奏するとなると、終わりはいったい何時になるのだろうと思いましたが、全体にコープマンらしいきびきびとした演奏で、休憩とアンコールも含めて2時間半という、思ったより短い演奏会になりました。かといって、省略しているとか、手抜きとかいう印象のないところがさすがはコープマンだなあと、妙なところで感心してしまいました。

1曲目の第1番は、狩りの雰囲気が楽しい、第1楽章のホルンが印象的な楽曲です。出だし、ちょっと合わないような感じがして、あれっと思いましたが、進むごとにだんだんアンサンブルが合っていい感じでした。特に第4楽章のメヌエットではホルンはもちろん、オーボエとファゴットが良い雰囲気を出していました。曲が終わった時に、コープマンも真っ先に管のパートを立たせていたくらいです。

2曲目の第5番は、第1楽章の後半のチェンバロ独奏部分が圧巻でした。バッハが残している長い方のカデンツァ(すべて記譜されている)を使った演奏でしたが、コープマンらしい、明確な強弱をつけたきびきびとした名妓を披露していました。3曲目の第3番も、第2楽章のチェンバロが印象的でした。楽譜では2小節しか記譜されていない第2楽章は、ヴァイオリンかチェンバロがバッハの他の曲を利用しながら即興演奏をするのが慣例ですが、今回はコープマンのチェンバロによる独奏で、いかにも楽しそうに弾いているのが感じられました。

休憩を15分挟んだ後半は、第2番がトランペット、第6番がヴィオラの2重奏、第4番がリコーダーの2重奏というように、各楽器の聴かせどころが満載のプログラムでした。後半1曲目の第2番では、第1楽章と第3楽章にトランペットが入るのですが、モダン・トランペットでも難しいのではないかと思う高い音を綺麗に演奏していました。バッハの配下だったトランペット奏者が、バッハのある作品を演奏した後に過労で死んでしまった、という挿話がありますが、案外この曲だったのかもしれないな、と思ったりもしていました。

後半2曲目の第6番は、ヴィオラ、チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、コントラバス、チェンバロという低音弦楽器ばかりで演奏される曲で、ブランデンブルグ協奏曲の中でも好きな曲なのですが、なぜか肝心のヴィオラの音が合っていなくて、聴いていてとても残念でした。本人達もチューニング不良がわかっていたようで、楽章と楽章の合間に一生懸命に合わせようとしていたようなのですが、曲が進めば進むほど外れていったように感じられました。コープマンも正直というか何というか、この曲だけは演奏が終わるとすぐに舞台裏に戻ってしまいました。

最後に演奏された第4番は、2本のリコーダーのこだまのような音型ではじまる実に魅力的な曲ですが、とても良い出来だったと思います。二人のリコーダー奏者の息もぴったりと合っていましたし、ソロ・ヴァイオリンも随所で妙技を披露していました。今回の演奏会は、コープマンのチェンバロはもちろんですが、めったに実演を聴けない(それだけ難しい?)第1番と第2番も含めて、一晩でブランデンブルグ協奏曲を全曲聴くことが出来て、本当に贅沢な演奏会だったと思います。

それにしても、曲ごとに楽器編成が変わるために、裏方さんは本当に大変だったと思います。特に前半の2曲目の前と後は、短時間でチェンバロの向きを変えなくてはならなかったし、チェンバロの蓋も着けたり外したり(チェンバロは指揮をしながら演奏する関係で、第5番以外ではコープマンは客席に背中が向くように配置され、蓋が外されていたのですが、第5番はチェンバロが主役のせいか、向きを90度変えて蓋も着けて演奏されました)というような、めったに見られない動きを見せていただきました。

今回私がいたKitaraの2階のバルコニー席は、舞台の真横で音的には多少問題があるのですが、舞台を見るにはいい場所でした。コープマンが、チェンバロを演奏しながら合間合間で顎やら唇やらに触る様子も見られましたし。どういうものか、早いパッセージの時にかぎって、右手がちょこちょこと顔の方にいっていたみたいで、やんちゃなコープマンらしい印象を受けました。

演奏者には(ヴィオラ以外は)ほとんど文句を付けようのない演奏会だったのですが、オーケストラ自体が小編成なので、大ホールより小ホールの方が音を聴くには良かったのではないか、という印象を受けました。もう一つ気になったのは「ヴラボー」屋さんがいたことでした。曲の余韻を楽しむいとまもなく、われ先に拍手をしたり叫んだりというのは、如何なものでしょうか。あんまり良いことには思えなかったのですけれど……。


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