ミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブ(グローブ座の音楽家達)
シェークスピアの音楽

2000年7月2日(日)18:00
大雪クリスタルホール音楽堂(旭川市)

    フィリップ・ピケット Philip Pickett [音楽監督、リコーダー Director, Recorder]
     
    ジョアン・ラン Joanne Lunn [ソプラノ Soprano]
     
    ミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブ [グローブ座の音楽家達 Musicians of The Globe]
     エイドリアン・チェンドラー Adrian Chandler [ヴァイオリン Violin]
     トム・フィヌケン Tom Finucace [シターン Cittn]
     ジェイコブ・ヘンマン Jacob Heringman [リュート Lute]
     エリザベス・パレット Elizabeth Pallett [バンドーラ Bandora]
     キャサリン・フィニス Cartherine Finnis [ヴィオラ・ダ・ガンバ Viol]
     
    ジョン・バラジャー John Ballanger [道化 The Clown]
 
 
ストローベリーの葉
Strawberry leaves: Anon.
恋する男とその恋人(お気に召すまま)
lt was a lover(As You Like lt): Thomas Morley(1557-1603)
セリンガーズ・ラウンド
Sellingers Round: Anon.
ウォールシンガム
Walsingham: Anon.
どうしたら真の恋人を(ハムレット)
How should I your true love know(Hamlet): Anon.
5尋の深い海の底に(テンペスト)
Full Fathom five(The Tempest): Robert Johnson(1583-1633)
蜂が蜜を吸うところで(テンペスト)
Where the bee sucks(The Tempest): Robert Johnson
彼女は僕の過ちを許してくれるだろうか
Can she excuse my wrongs :Thomas Morley
さようなら、恋人よ(十二夜)
Farewell dear love(Twelfth Night): Robert Jones
わが主君マーチのパヴァン
My Lord of Marche Pavan: James Lauder(c.1600)
ガリアード
Galliard: Anon.
その唇を持ち去ってほしい(尺には尺を)
Take o take those lips(Measure for Measure): John Wilson(1595-1674)
聴け、聴け、ヒバリの歌を(シンベリン)
Hark hark the lark(Cymbeline): Robert Jobnson?
哀れなその子は泣きながら(オセロー)
The poor soul sat sighing(Othello): Anon.
ワトキンズおばさんのエール
Mother Watkin's Ale :Anon.
 
―――(休憩 15分)―――
 
ああ、いとしい君
O mistresse myne: Morley Consort Lessons
ああ、いとしい君(十二夜)
O mistresse myne(Twelfth Night): Thomas Morley
ラ・ブネット
La bounette: Anon.
ラ・ドゥーヌ・セラ
La doune celia: Anon.
ラ・シ・ミズ
La shy myze: Anon.
ドゥルシーナ
Dulcina: Anon.
ユダヤ人のダンス
The Jew's Daunce: Richard Nicholson(1570-1639)
ナツメッグとジンジャー
Nutmegs and Ginger: Anon.
ラ・ヴォルタ
La Volta: Morley Consort Lessons
ダフネ
Daphne: Anon.
その窓から行きなさい
Go from my window: Morley Consort Lessons
いまこそ花摘みの季節
Now is the month of Maying: Thomas Morley



初来日のミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブですが、今回は北海道では旭川のみの公演と言うことで、日曜日の午後6時という開演時間にもめげずに(なぜなら、6時開演、アンコールも入れて8時終了ということになると、JRと地下鉄を乗り継いで我が家にたどり着くのは、早くても11時過ぎになる計算だったんですが)行って参りました。チケットも旭川市内でしか販売していなかったので、会場の大雪クリスタルホールに電話で直接予約して、当日会場で受け取りました。

大雪クリスタルホール内の音楽堂は、1階と2階合わせて597席という中規模の音楽ホールですが、音楽だけでなく講演会などにも使用できるように設備が整えられているそうです。舞台幅に比べてホールの奥行きが長く、天井も高くて全体に細長く感じられました。会場の入りは6割強と行ったところだったでしょうか。180万都市の札幌でも、古楽系コンサートだと453席の小ホールが満杯にならない時がありますから、36万の旭川だとこんなものかしらとも思いながら、古楽ファンとしては一抹の寂しさを感じてしまいました。

ミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブは、シェークスピアの数々の戯曲が初演されたロンドンのサウスバンクスに、当時のグローブ座の建築を可能な限り忠実に再現して建てられ、1997年にオープンしたシェークスピア劇専門劇場(ニュー・グローブ座)の専属音楽団です。優秀な若手の古楽演奏家達が集められたミュージシャン・オブ・ザ・グローブは、「大胆不敵な考古学者」との異名をとるフィリップ・ピケットの音楽監督のもと、時代考証に配慮した質の高い音楽をCDやコンサートを通して世界中に提供しています。

さて、演奏会ですが、開演前から顔の上半分だけを隠す白いコメディ・デラルティの仮面で隠した、道化役のジョン・バランジャーが会場内をうろうろし、イタチらしきぬいぐるみを使ってのパフォーマンスやら、客を誘導するまねなどをして雰囲気を盛り上げていました。彼は最初から最後まで舞台の上にいて、演奏中や合間に手品やパントマイム、曲芸などをして客のご機嫌を伺い、次の音楽へ流れ込むきっかけとなっていて、とても面白い趣向だと思いました。

音楽の方は、前半がシェークスピア劇の歌曲が中心の構成でした。ヴァイオリン、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバに加えて、マンドリンに似たシターン、いびつなギターのようなバンドーラ、それにリコーダーというブロークン・コンソート風な楽器構成での器楽曲『ストローベリーの葉』ではじまり、「お気に召すまま」の第5幕第3場で歌われる、トマス・モーリー作の軽快な民謡風の『彼氏と彼女が』が歌われ、また賑やかな器楽曲が演奏された後、一転してリュートによる民謡『ウォールシンガム』の旋律に乗せて、狂ったオフィーリアの悲しみの歌『どうしたら真の恋人を』というように、短い曲が次々と演奏されましたが、歌も演奏もとても面白く聴けました。

歌を担当したソプラノのジョアン・ランは、澄んだ高音が印象的な、繊細かつ華麗な歌を披露していました。ただ、私の座っていた場所が比較的壁に近かったからだとは思うのですが、残響がきつい上に音が硬く響くので、高音域で伸びる聴かせどころの音が頭に突き刺さるように聴こえてしまい、後半には聴いていて疲れてしまいました。『5尋の深い海の底に』の「ディン、ドン、ベル」の所などは、ほんとうに素晴らしい声だったので、音響の良いホールだったなら、さぞかし美しく聴こえたろうと思います。

合奏の方は、もの凄く旨い、という風には評せないかもしれませんが、息のあった柔らかな響きを聴かせてくれました。音楽監督のピケット氏のリコーダーも、素人っぽい所がアットホーム感を出しているというか、ある意味では、いかにもシェークスピアの時代らしい演奏に一役買っていたと思います。

前半の最後は、「オセロー」のかの有名な『哀れなその子は泣きながら(柳の歌)』がしっとりと終わった後、道化によって居酒屋で出会った2人の男が酒の飲みっぷりを競い合って、ついには大げんかになる一人二役の芝居の後、軽快で楽しい艶笑歌『ワトキンズおばさんのエール』が歌われて締めくくりとなりました。

15分の休憩後、後半も道化の手品からはじまり、今度はシェークスピアの時代の歌曲やコンソートを中心に構成されたプログラムでした。「十二夜」の『ああ、いとしい君』の歌の後、3曲の器楽曲に乗って演じられた、剣や鎌のお手玉風の曲芸がとても印象に残っています。曲そっちのけでパフォーマンスを楽しんでしまいました。

後半の歌では、『ダフネ』と『いまこそ花摘みの季節』が特に良かったと思います。アポロンに請われながら拒み通し、最後には月桂樹になってしまったダフネの神話を題材にした『ダフネ』は、フォイボス(アポロン)とダフネとを1人で歌い分ける難しい曲なのですが、リンはなかなか芸達者に歌っていたと思います。まだ20代とのことでしたので、これからの成長が非常に楽しみな歌手だと思います。

公演の最後は、バラジャー氏によってシェークスピアの“この世はすべて舞台、男も女も役者にすぎない――(お気に召すまま、第2幕第7場)”の台詞とともに、暗転して終わりました。休憩も入れて1時間45分、歌も演奏もパフォーマンスも、本当に楽しめた演奏会でした。音楽を聴いている間、思わずからだが動いたり足がリズムを取ることがしばしばあって、私だけでなく周りの人も大部分はそうだったようです。隣の高校生くらいの男の子が、「スゲー」を連発しておりました。


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