シギスヴァルト・クイケン
J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会

[第一夜]2000年2月17日(水)19:00開演
[第二夜]2000年2月18日(木)19:00開演
札幌コンサートホール《Kitara》小ホール

    シギスヴァルト・クイケン Sigiswald Kuijken [Violin]
 
 
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲
J.S.BACH: Three Sonatas & Three Partitas for Violin Solo BWV1001-1006
[第一夜][第二夜]
ソナタ第2番イ短調 BWV1003
  Sonata No.2 A minor
    1.Grave
    2.Fuga
    3.Andante
    4.Allegro
ソナタ第1番ト短調 BWV1001
  Sonata No.1 G minor
    1.Adagio
    2.Fuga. Allegro
    3.Siciliana
    4.Presto
パルティータ第3番ホ長調 BWV.1006      
  Partita No.3 E major
    1.Prelude
    2.Loure
    3.Gavotte en Rondeaus
    4.Menuet I/II
    5.Bourree
    6.Gigue
パルティータ第1番ロ短調 BWV1002
  Partita No.1 B minor
    1.Allemamde
    2.Double
    3.Courante
    4.Double. Presto
    5.Sarabande
    6.Double
    7.Tempo di Borea
    8.Double
―――(休憩 20分)――――――(休憩 20分)―――
パルティータ第2番ニ短調 BWV.1004
  Partita No.2 D minor
    1.Allemamde
    2.Courante
    3.Sarabande
    4.Giga
    5.Ciaccona
ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
  Sonata No.3 C major
    1.Adagio
    2.Fuga
    3.Largo
    4.Allegro assai


シギスヴァルト・クイケンのJ.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会に2日連続で行って来ました。先月のマイスキーのリサイタルに続き、2ヶ月連続のバッハです。今年はバッハの没後250年なので、東京では古楽器によるバッハの演奏会がずいぶんあるようですが札幌では数が少なくて、これが今年初めての古楽器による演奏会でした。チケットは1日目は完売、2日目は若干空席があったものの、9割方は席が埋まっていました。

シギスヴァルト・クイケンは、レオンハルトやブリュッヘンらとともにオランダ・ベルギーの古楽演奏を代表する音楽家兄弟、クイケン兄弟の次男です。1944年にベルギーのブリュッセル郊外ディルベークに生まれた彼は、7歳からルネサンス音楽と古楽器に親しみ、兄のヴィーラントとともに独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得しました。
1969年からは顎当てや肩当てを使わない、つまり顎で支えないバロック時代のヴァイオリン奏法の再現に取り組みはじめ、現在ではハーグ音楽院とブリュッセル音楽院でこの奏法を教えています。1972年にはバロック・オーケストラ《ラ・プティット・バンド》を結成し、積極的にバロック時代の音楽の演奏会や録音を行っています。

写真で見ると神経質そうな方に見えますが、案外おっちょこちょいというか、気さくな感じの人のように思われました。2曲目のパルティータ第3番を弾くために楽譜を持って出ていらしたとき、譜面代に載せてから3曲目のパルティータ第2番だと気づいて、はにかんだ笑いを見せつつ、詫びの言葉を述べながら楽屋に戻って行かれました。その様子を見ながら、思わず「かわいい」と思ってしまったのは、多分私だけでは無かったはず……。

1日目は、会場の温度が高すぎたのか、はたまた事前準備が足りなかったのか、2曲目のパルティータのメヌエットあたりまで、調子が外れたような掠れた音がしていましたが、ガット弦が暖まったメヌエット以降は、鳴りも良くなってガット弦らしい柔らかで軽やかなバロック・ヴァイオリンの音を堪能しました。2日目は、会場の気温設定も前日よりは低かったように感じられましたが、最初から綺麗な音がしていました。

シギスヴァルト・クイケンは、1981年に無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータのバロック・ヴァイオリンよる初の全曲録音をしています。その後、バロック・ヴァイオリンによる録音も増えてきましたが、いまだにクイケンの演奏を越えてはいない、と評されることが多いようです。モダン・ヴァイオリンの演奏のような張りつめた緊張感こそありませんが、しなやかなバロック・ヴァイオリンの音を充分に生かした軽やかな響きがとても生き生きと感じられます。

さすがに現在のクイケンの演奏は、19年前の録音に比べるともっと自由な感じがありましたが、最近話題になったポッジャーの録音などに比べると、基本をきちんと押さえた重厚さがあるように思います。表現として適切かどうかわかりませんが、ポッジャーの演奏が草書のようなものだとしたら、19年前のクイケンの録音は太字の楷書、今回のリサイタルの演奏は太字の行楷書といったような違いを感じました。でも、決して堅苦しくは無いんですよね。

1日目も2日目も、アンコールではその日に演奏しなかったソナタとパルティータから3つの楽章を演奏してくれました。最後には楽譜とヴァイオリンを掲げながら、会場も良かったんだよ、といった仕草をして会場への拍手も誘ってリサイタルを終えました。本当に、とても楽しく過ごせた2日間でした。

(2000.03.12)

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