甘い蜂蜜はいかが? HONEY FROM THE HlVE
1999年11月9日(火)19:00
札幌コンサートホール《Kitara》小ホール
エマ・カークビー Emma Kirkby [Soprano]
アントニー・ルーリー Anthony Rooley [Lute]
| 〈エセックス伯〉 Earl fo Essex: | |
ジョン・ダウランド John Dowland | ぼくの受けた苦しみを Can she excuse |
| ああ、やさしい森よ O sweet woods |
| その昔、愚かな蜜蜂も It was a time |
アントニー・ホルポーン□□ Anthony Holborne | ペンブロウク伯夫人の楽園 Countess of Pembroke's Paradise |
ダウランド Dowland | ため息のガリアード(以上2曲,リュート独奏) The Sighs Galliard |
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| 〈ベッドフオード伯夫人ルーシー〉 Lucy Countess of Bedford: | |
ダウランド Dowland | ぼくは見た、あの人が泣くのを I saw my lady weep |
| 流れよわが涙 Flow my tears |
| 悲しみよ、とどまれ: Sorrow stay: |
| 早まって死んではいけない Die nor before thy day |
| 歎け、昼は闇の中に去った Mourn, day is wirh darkness |
| 珍品はいかが、ご婦人がた Fine knacks for ladies |
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| ―――(休憩 20分)――― |
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| 〈女王エリザベス1世〉 Queen Elizabeth I: | |
ダウランド Dowland | さようなら、あまりにも美しいひと Farewell, too fair |
| 時間は静止して Time stands still |
| 愛の神よ、かつて出会ったことがあるか Say, love, if ever |
ホルポーン Holborne | ペンブロウク伯夫人の葬送 Countess or Pembroke's Funerals |
ダウランド Dowland | ガリアード(以上2曲,リュート独奏) The Galliard |
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| 〈へンリー・リー卿〉 Sir Henry Lee: |
ダウランド Dowland | 彼の金髪も His golden locks |
| 「時間」の長子: Time's eldest son: |
| ならば坐りこんで Then sir thee down |
| 人が「来たれ」と歌うとき When others sing |
| 華やげる宮廷から遠く Far from triumphing court |
エマ・カークビー(ソプラノ)とアントニー・ルーリー(リュート)ご夫婦のコンサートに行って来ました。会場のKitaraの小ホールは9割以上の入りでした。チケットは売り切れだったかもしれません。今回は1階7列目のやや右よりの席だったので、表情などもよく見えて、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。
旦那様のアントニー・ルーリーはリュート奏者であると同時に、1969年からコンソート・オブ・ミュージックを主催して、ルネサンスから初期バロックにかけてのイギリスやイタリアを中心とする、埋もれた世俗歌曲の発掘と演奏を行っています。録音も多数あり、ダウランドの「リュート歌曲全集」をはじめとして、古楽演奏のスタンダードになっているものも少なくありません。
奥様のエマ・カークビーはヴィヴラートを抑えた細く透明な、聴きようによってはボーイ・ソプラノにも聞こえる声で80年代に一世を風靡しました。コンソート・オブ・ミュージックのトップ歌手であると同時に、アンドルー・パロットやホグウッド、クリストファー・ペイジらといった指揮者のもとで中世から古典派までに広いレパートリーを持っています。瑞々しい歌唱は「天使の声」とたとえられています。カークビーは、現在の古楽系女性歌手の歌唱に決定的な影響を与えています。一般に“白い声”とも言われるノン・ヴィヴラートの女声は、彼女からはじまったと言っても過言ではないと思います。
今回のプログラムは、ダウランドの歌曲を中心として編まれていました。チラシには《エリザベス1世(女王蜂)のリュート奏者の地位に憧れつづけたダウランド。その夢はかなわなかったけれど……数多くの珠玉の名作(蜂蜜)が生まれた》とありました。エリザベス1世も含めて、ダウランドのパトロンやダウランドにゆかりの人々に関係する曲を集めたプログラムです。
薄紫のシャツを着てリュートを抱えたルーリーがステージ中央の左の椅子に、抑えたオレンジ系のマープリングのブラウスとパンツ(パンツはゆったりとして裾を絞ったトルコ風)にサーモンピンクの裾がギザギザしたフリンジ付きの長目のベストという出で立ちのカークビーが右側に椅子に座ってコンサートが始まりました。
プログラムの前半は後に女王に反乱を起こして処刑される、エセックス伯ロバート・デヴルーに関連する3曲からはじまりました。身振り手振りも交えての熱演で、3曲目の「その昔、愚かな蜜蜂も」では『僕は辛さのあまり膝をつき』と言うところで、実際に舞台に膝をついて歌いました。2曲目の「ああ、やさしい森よ」の途中で息継ぎに失敗したらしく、ちょっと曲が途切れた所もありましてが、しっとりと歌声に聞き惚れました。
その後、ホルボーンとダウランドのリュート曲が2曲続けて演奏されました。ルーリーの演奏は派手さはないですが、静かに浸み入るような感じがあります。うっとりと聴いていたら、曲の継ぎ目を聞き逃して、どこでホルボーンの曲が終わったのかわからなくなってしまいました(汗)。
次に、ベッドフオード伯爵夫人ルーシー・ラッセルに献呈された『歌曲集第2巻』から6曲が歌われました。「流れよ、わが涙」等々有名どころをばかりでこのパートは主に座って歌っていました。6曲の中でも、最後の「珍品はいかが、ご婦人がた」は声も伸びがあって、明るくてコミカルな感じが良く出ていたと思います。
休憩をはさんで後半は『歌曲集第3巻』に収められているエリザベス1世を讃えた歌3曲と、女王の側近だったヘンリー・リー卿が作詞した曲が(多分作詞したと思われるものも含めて)5曲、リュートの独奏をはさんで演奏されました。1曲目の出だしが合わなくて歌い直すというハプニングもありましたが、なかなか良い演奏だったと思います。
「『時間』の長子」から「人が『来たれ』と歌うとき」までの3曲は、珍しく楽譜を膝に広げて歌っていました。まじまじと見て、という風ではなかったのですが、この3曲はあまり歌わない曲なのかもしれないな、と思いながら見ていました。楽譜もちらりと見えたのですが、見えた範囲ではダウランドが考案した4人一緒に使える楽譜、つまり、上下左右の4方向から見るのが可能な楽譜のようでした。
アンコール曲はダウランドの「暗闇に僕は住みたい」と「今こそ別れねば」でした。ルーリーがアンコール2曲目の曲は演奏前に題名を言ったので、会場からは思わず笑いが起こっていました。。
前日の東京からすぐの札幌公演でしたので疲れがたまっていたのか、長い曲では音程が不安定になる所もありましたが、カークビーの透明な美声を聴いているだけで、とても幸せな気分になれました。若い頃のような自然に高音部に突き抜けていく伸びやかさはさすがに衰えていますが、変わりに声に潤いや艶が出ているように感じられました。やっぱりカークビーは大好きです。
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