札幌古楽の夏音楽祭 '99より
室内楽による古典派のオペラアリアとコンチェルト
 〜モーツァルトとベートーヴェンの世界〜

1999年8月27日(金)19:00
札幌コンサートホール《Kitara》小ホール

    テノール:ジョン・エルウィス
    フォルテピアノ:渡邊順生
    フルート:中村 忠
    ヴァイオリン:高田あずみ
    ヴァイオリン:渡邊慶子
    ヴィオラ:桐山建志
    チェロ:浅岡理恵
    コントラバス:宇田川貞夫


 

 W.A.モーツァルト W.A.Mozart (1756-1791)
  オペラ「魔笛」より短調
   序曲
   第1幕3場アリア「なんと美しい絵姿だろう」(タミーノ)
  オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」より
   第1幕3場アリア「心ゆかしい恋の息吹は」(フェランド)
  オペラ「イドメネオ」より
   レシタティヴォ「わが民よ」(イドメネオ)
   アリア「心に平和が戻る」(イドメネオ)

  ピアノ協奏曲 第23番 イ短調 Kv.488

 ベートーヴェン L.v.Beethoven (1770-1827)
  連作歌曲集「遙かなる恋人に寄す」 Op.98
   ぼくは丘の上に座っている
   灰色の霧を破って
   空たかく軽やかに帆をあげてゆる雲よ
   空たかく流れるこの雲たちは
   五月がめぐってきて
   さあ、これらの歌を受け取ってください

  スコットランド−アイルランド民謡集より
   音楽と恋とワイン
   メアリー、窓辺に出てきてよ Op.108-1
   こんなに愛していることを Op.108-17
   日没 Op.108-2
   僕の街のサリー Op.108-25



札幌古楽の夏音楽祭は、1998年から始まったセミナー形式のアマ・プロを問わずに参加できる音楽祭です。2回目の今年は、8月25日(水)〜8月29(日)の5日間で行われました。個人レッスンとアンサンブルレッスンの二つに別れていて、今年の個人レッスンでは声楽やリコーダー、バロック・ダンス、ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロック・ヴァイオリン、フラウト・トラヴェルソ、チェンバロ/フォルテ・ピアノなどのコースが設定されていました。
去年は仕事の都合で聴きにいけませんでしたが、今年はじめて音楽祭の講師を中心とするコンサートを聴きに行ってみました。

今回のコンサートのテーマである、オペラアリアとコンチェルトの室内楽曲への編曲は、18世紀半ばから19世紀にかけて一般的に行われていた事でした。ラジオやレコード、CDなどが無かった時代には、自分の好きは時に好きな作品を聴く、といった楽しみが気軽に出来なかったため、編曲版によって大規模な曲を楽しむ習慣は長く指示された方法だったわけです。
今回演奏されたモーツァルトの曲は、演奏者によって18世紀風に室内楽へ編曲されたものですが、当時のサロン・コンサートの雰囲気をよく伝えていたと思います。

最初のフォルテ・ピアノとフラウト・トラヴェルソ(フルート)及び弦楽四重奏という楽器編成で演奏される魔笛の「序曲」はとてもシンプルでしたが、各楽器の音がはっきり聴けて、非常に面白く感じられました。
オペラ・アリアの方は、テノールのジョン・エルウィスの繊細で端正な歌がとても魅力的でした。一般的なオペラの歌手と違って、古楽系の歌手は声量が足りない場合もあるのですが、エルウィスは張りがありながら嫌みがない、理想的な古楽系のオペラ歌手だと思います。

2曲目のピアノ協奏曲第23番も、フォルテ・ピアノとフルート、弦楽四重奏による室内楽に編曲されたものでした。モーツァルトのピアノ協奏曲には、モーツァルト自身が管弦楽のパートを省略して、弦楽器のみで演奏しても良い、としている曲が4曲あるそうです。第23番は管楽器を省略出来る曲ではありませんが、今回と同じ楽器編成のために18世紀に作られた編曲がベルリンの図書館に保存されているそうです。

正直に言いますと、私はこの曲はあまり良い演奏だと思えませんでした。ヴァイオリンの音で、せっかくのフォルテ・ピアノの音が、弱音部分はほとんど聴こえなかったからです。でも、当時のフォルテ・ピアノは現代のピアノよりも音が堅くて小さめのだったわけですから、当時もピアノはあまり聴こえなかったのかもしれません。

協奏曲が終わって前半終了でした。休憩時間にホワイエに出てみたらセミナー参加者らしい女性が2人、バロック・ダンスのステップのおさらいをして、いかにもセミナーの音楽会という雰囲気を醸し出していました。

後半はベートーヴェンの歌曲集で、ジョン・エルウィスの声をたっぷり堪能いたしました。「遙かなる恋人に寄す」はフォルテ・ピアノの伴奏で、「スコットランド−アイルランド民謡集」からの5曲はフォルテ・ピアノとヴァイオリンとチェロで伴奏されました。「遙かなる恋人に寄す」の格調高い歌唱もよかったですが、「スコットランド−アイルランド民謡集」からの5曲が、はじめて聴いたせいなのか、とても印象的でした。特に最初の「音楽と恋とワイン」の軽妙さと、4曲目の「日没」の前半部分で、ヴァイオリンとチェロが交互につけるピチカートの伴奏の優しさが良かったと思います。

アンコールにはベートーヴェンの「アデライーデ Op.46」と「音楽と恋とワイン」が演奏されました。本当に、ジョン・エルウィスの声はノーブルで素敵だなあ、とうっとりと聴き惚れておりました。

今回は仕事の都合で聴きに行くことが出来ませんでしたが、セミナー最終日には講師と受講生によるコンサートがありました。来年は、できればセミナー最終日のコンサートも行ってみたいと思います。でも、セミナーに参加できれば、もっと楽しいだろうと。思います
講師陣もなかなか豪華(今年は、ヴィオラ・ダ・ガンバに平尾正子、リコーダーに吉沢実、バロック・ダンスに浜中康子等々)ですので、楽器の演奏やバロック・ダンスなどをなさる方は、観光も兼ねて夏場は札幌でセミナーに参加してみる、というのはいかがでしょうか。


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