|
1999年3月05日(金)19:00
スティーヴ・プレーヤー Steve Player [ダンス、ギター] クララ・サナブラス Clara Sanabras [ソプラノ、ギター] ヒル・パール Hille Perl [ヴィオラ・ダ・ガンバ、リローネ、ギター] トマス・イーレンフェルト Thomas Ihlefeldt [テオルボ、ギター] ミヒャエル・メツラー Michael Metzler [パーカッション] アンドルー・ローレンス=キング Andreew Lawrence-King [スパニッシュ・ハープ] |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
ローレンス=キングが主催する、ハープ・コンソートの演奏会に行って来ました。
今回の公演は、ハープ・コンソートの最初の録音である「ルス・イ・ノルテ〜灯火と北極星〜」に録音された曲を中心としたプログラムでした。
みぞれ混じりの、どちらかというと荒れた天候だったので、Kitaraの小ホールといえども空席が多いのではないかと思って行きましたが、ほぼ満席の状態でした。 前方中心にパーカッション。向かって右側にハープとテオルボ(リュート属の楽器)、左手にヴィオラ・ダ・ガンバ、後ろにバロック・ギター2人の計6人で、最初のイタリアのコレンテ(クーラント:フランス起源の舞曲。2分の3拍子、もしくは4分の6拍子の急速な舞曲)3曲は、まじめにしっとりと演奏していたのですが、その後の2グループ目の曲からは次第に様相が変わっていきました。 ピサドールの「聖ヨハネの日」を、後ろでギターを弾いていたクララ・サナブラスがしっとりと歌い上げた後、とぎれなく始まった即興曲では、後ろのギターのスティーヴ・プレーヤーがゆっくりと舞台前方に出て来て、すばらしいダンスを披露してくれました。最初は上半身はほとんど動かさず、大きな跳躍をしながら一回転ターンをしたり、ジャンプして足を交差させるなど、さながらバレエかと思わせるような踊りでしたが、次第にフラメンコのように派手な上半身の動きに床が抜けるかと思うような勇壮かつ華麗なサパティアード(タップ)を披露してくれました。 3グループ目はミランに基づく即興曲を挟んで、ディエゴ・オルティスのレセルカーダ集から2曲が演奏されました。ここでは、ヴィオラ・ダ・ガンバを弾いていたヒル・パーレの演奏が光りました。女性とは思えないような太くて豪快な音で、文句のつけようがないくらい上手でした。CDで聴いていたとき、私はてっきりこの人は男だと思っていたんです。文字通り、目から鱗が落ちました。 4グループ目の即興「カナリーオ」では、パーカッションとサパティアードの掛け合いがとても素晴らしかったです。曲の途中であまりの素晴らしさに、お客さんが拍手を送ったくらいでした。どことなく、大道芸の匂いを感じさせるパフォーマンスでもありました。ちなみに、「カナリーオ」は、カナリア諸島の舞曲です。 5グループ目も楽しい演奏とダンスで客席をわかせてくれましたが、特に最後の「パラディータ」で、ダンス+ギター担当のスティーヴ・プレーヤーが客席に飛び降りて来て、ほとんどウクレレと見まごうばかりのソプラノ・バロック・ギターを弾きながら通路を流して歩き出したのには参りました。本当に、プレーヤー氏はサービス精神の固まりのようなお方でした。 20分の休憩を挟んで後半開始の1曲目、舞台には4人だけで、パーカッションとダンスのふたりはお休みなのかしらと思うまもなく、ローレンス=キングがゆったりとハープをかき鳴らした途端、客席後方からなにやら怪しい音が! 何事かと思って振り向くとパッと扉が開いて、プレーヤー氏はバグパイプを吹き鳴らしつつ、そしてパーカッションのミヒャエル・メツラーはタンバリンを叩きつつ登場しました。
後半の曲では、「チャコーナの夕べが」の猥雑な歌と踊りも面白かったですが、「馬上試合」が一番の聞き物(見物?)だったように思います。単純な和音の上で即興演奏が延々と5分くらい続いたのですが、ハープ対ギターとガンバの掛け合いで馬上試合を表現していて、とても白熱した演奏だったと思います。
ダンスと音楽が渾然一体になった楽しい舞台はいつのまにやら最後の曲も終わってしまい、アンコールには2曲が演奏されました。2曲目は、ハープ・コンソートの2枚目のCD「カロランのハープ」からの曲で、私はこのアイルランドのトラッド音楽も大好きなので、次の演奏会はこのプログラムでやって欲しいな、などと考えながら聴いていました。 休憩も入れて2時間半の公演は、クラシックのコンサートとしては長い方だと思います。けれど、終わってみれば本当にあっという間で、そんなに時間がたっていたなんてまったく感じられませんでした。とにかく、明るくて底抜けに楽しい、興奮の2時間半でした。興奮のあまり脳が活性化してしまって、帰ってから眠れなくなってしまったのには困りましたが。 今回の公演では、「ルス・イ・ノルテ」の中でもエレガントなダンサの曲はほとんど演奏されず、演奏されたものはダンスが省略されていました。踊られたのは華麗で猥雑なバイレのみで、そう言う意味では、スペインの民衆が集う居酒屋や、お祭りなどでの庶民的なダンス・バンドの音楽会、という雰囲気でプロデュースされていたように思えます。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||