ヴァチカン システィーナ礼拝堂合唱団

1999年2月16日(火)19:00
札幌コンサートホール《Kitara》大ホール

    指揮:ジュゼッペ・リベルト Giuseppe Liberto
    管弦楽:システィーナ礼拝堂合唱団 Coro Della Coppella Sistina
    合唱:コレギウム・ヴォカーレ Collegium Vocale Gent

 ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ (1525?-1549)
  主の祈り Pater noster
  鹿のように(谷川慕いて) Sicut cervus
  わたしの民よ Popule meus
  主に感謝をささげよ Confitemini Domino

 グレゴリオ聖歌
  幼子が生まれた(入祭唱) Puer natus (introitus)

 ロレンツォ・ピエル・ルイジ・ペロージ (1872-1956)
  ほむべきかな Benedictus
  アヴェ・マリア Ave Maria
  あなたはペテロ Tu es Petrus

 グレゴリオ聖歌
  ガラリヤ人たちよ(入祭唱) Viri Galilaei (introitus)

 ドメニコ・バルトリッチ (1917-)
  来たれ、聖霊よ Veni Sanctae Spiritus
  めでたし、憐れみ深き母よ Salve mater misericordia
  天は神の栄光を物語り Coeli enarrant

 グレゴリオ聖歌
  主の霊は全地を満たす(入祭唱) Spiritus Domini (introitus)

 ジュゼッペ・リベルト (1943-)
  あがない主の優しい母 Alma Redemptoris Mater
  あなたの保護下に Sub tuum praesidium
  幸いあれ、天の女王よ Ave Regina caelorum



2ヶ月ぶりの演奏会は、「ヴァチカン システィーナ礼拝堂合唱団」のコンサートになりました。

ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂と言えば皆さんご存じの通り、ミケランジェロの「最後の審判」の壁画がある礼拝堂です。1471年に、教皇シクトゥス4世が設立した「聖歌隊寄宿学校」を直接の前身として設立したのがシスティーナ礼拝堂合唱団で、今年は日本にキリスト教が伝来して450年の記念年だそうで、今回はそれを記念しての、1996年に続いて2度目の来日公演ということでした。

会場に着いて驚いたのは、空席が数えられるほどの満員の状態だったことと、カトリック教会関係者(特に尼僧)の姿がとても目立ったことでした。黒や灰色の同じ服を着た集団があちらこちらにいて、いつものコンサートとはちょっと違った雰囲気を醸し出していました。

7日〜21日までの15日間で11回のコンサートをこなすという超過密スケジュールの、後半の最初の演奏会が札幌公演でした。2階の後ろから2列目の正面近くが私の席で、指揮の様子などはよく見えませんでしたが、音的には満足できる位置だったと思います。合唱団は正確には数えませんでしたが、舞台前列から少年たちのソプラノ、少年たちのアルト、男性たちのテノール、そして、バスがそれぞれ10人ぐらいずつ4列に並んでいました。

コンサートの前半は、まずパレストリーナのモテットからでした。正直に言うと、あまり良い出来だったとはいえなかったように思います。各声部がどうしてもかみ合わず、バラバラとぶつかり合っている印象を受けました。4曲目に至っても音のバランスは今ひとつで、聴いていて居心地が悪い感じが拭えませんでした。少年合唱の声は非常によく訓練されていて、充分な音楽性を持って柔らかく、透明な声を聴かせていただけに、男声合唱のリズムの悪さが非常に気になった次第です。

パレストリーナに比べると、グレゴリオ聖歌と20世紀になってからのシスティーナ礼拝堂合唱団の音楽監督であったペロージ、バルトルッチ、そして今回の指揮者でもあるリベルトの3人のホモフォニーの作品はかなり良い出来だったと思います。特にグレゴリオ聖歌では、パレストリーナではどうしてもそろわなかったテノールとバスがぴたりと合わさって、礼拝堂付きの合唱団というものの伝統の重みを感じることができました。

今回の演奏会の曲の中で特に感動的だったのは、ペロージの『あなたはペテロ』とバルトルッチの『天は神の栄光を物語り』の2曲でした。この2曲ではどの声部も申し分のなくバランスが整っていて、美しいハーモニーを響かせていました。特に『天は神の栄光を物語り』の劇的で変化に富んだ演奏は、とても素晴らしかったと思います。

全体を通して、少年合唱の誠実で細やかな声は印象的でした。統一性の取れた美しい少年合唱というのはなかなか難しいのです(ウィーン合唱団でも、年度によってはバランスの悪さに愕然とすることがありました)が、システィーナ礼拝堂合唱団の少年合唱は非常に美しく澄んだ歌声を聞かせてくれました。アンコールでペロージの『主に向かって歌え(Cantate Domini)』とバルトリッチの『主に従うものよ、喜び歌え(Exultate iusti)』を歌ったのですが、ここでも、少年合唱がキリストを賛美する喜びの歌を伸び伸びと歌っていたが印象的でした。

今回の演奏を聴いて思ったことは、教会の礼拝堂とコンサートホールの違いです。礼拝堂では音が反射して、残響がたっぷり響きますから、ある程度声部のバランスが悪くてもほとんど気になりません。ところが、コンサートホールは一定の残響しかありませんから、場所によっては音が生の状態で聞こえてしまって、各声部のかみ合いが悪いと非常に目立つことになります。ですから、システィーナ礼拝堂合唱団の演奏も、コンサートホールではなくて残響のたっぷりした本来の礼拝堂で聴くことができれば、もっと違った印象になるのだろうなと思いました。

いろいろと考えさせられる事も多かった演奏会でしたが、合唱団の全般的な印象は非常に好感が持てました。特に、イギリスやドイツなどの緻密な合唱とは違った大らかさというか、指揮者も含めて、合唱団の全員が音楽を作り出すことを楽しんでいる様子がうかがわれて、聴きき終わった後は、とてもほのぼのとした気分になれたコンサートでした。

ホールを出ると、今公演を終えたばかりの合唱団がバスに乗って帰るところでした。次の日は仙台で公演することになっていたので、ひょっとすると、今日の最終の飛行機で仙台に向かうのかもしれないなと思いながら見送りました。


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