29 堂々たる楽想
  ディートリヒ(ディデリック)・ブクステフーデ/オルガン曲集
  Dietrich (Diderik) Buxtehude (1637?-1707)/Orgelwerke

ディートリヒ・ブクステフーデは、北ドイツ・オルガン楽派の最大の巨匠であり、バッハ以前のドイツを代表する音楽家のひとりです。リューベックの都市音楽監督として、多くの宗教声楽曲や鍵盤楽器のための音楽を残していますが、中でも『プレリュード(またはトッカータ)とフーガ』形式のオルガン曲の完成に大きな功績がありました。

自由で即興的なプレリュードまたはトッカータと、厳格な構造を持つフーガが交互に現れる説得力の高い作風は、後のJ.S.バッハにも大きな影響を与えました。J.S.バッハのオルガン曲として最も有名な『トッカータとフーガニ短調 BWV.565』は、ブクステフーデの影響を如実に示した作品としても知られています。

ブクステフーデの音楽の特性は、当時としてはかなりの演奏技術を要する、あくまでも英雄的な堂々たる楽想と、圧倒的な表現力にあると言われ、《プレリュードとフーガ嬰ヘ短調 BuxWV.146》はその代表的な作品と言えます。

同時に、《暁の星のいかに美しく BuxWV.223》を代表とする清々しいコラールは、ブクステフーデの作品がもつ幻想性や奥行きの深さを、私たちに教えてくれます。


 
【 Reference Disk 】
フォーゲル盤 ハラルド・フォーゲル
Harald Vogle
 《Dietrich Buxtehude, Orgelwerke》(vol.1〜vol.7)
 1988年録音(独)MD+G [MDG L 3268-70,3424-27])(分売)

ダイナミックでメリハリの利いた、バッハへの影響をあらためて感じさせてくれる表現力に優れた録音。7枚物の全集ですが、分売されています。写真はvol.1のもの。他の追随を許さない生き生きとした力強さと、構築性の高さで際だっています。

コープマン盤 トン・コープマン
Ton Koopman
 《Dietrich Buxtehude Orgelwerke》
 1989年録音 (瑞)NOVALIS [150 048-2]

コープマンによる剛直で力に満ちあふれた録音です。鍵盤を軽々と駆けめぐるコープマンの名技は非常に爽快で、良い意味での“楽天的”な軽快さがあります。正統派の演奏では無いかもしれませんが、曲に対する親しみやすさを感じさせてくれます。

アラン盤 マリー・クレール・アラン
 《ブクステフーデ:オルガン名曲集》
 1986年録音 [WPCS 5683/4]

マリー・クレール・アランのブクステフーデは、華麗という言葉が似合う演奏だと思います。ブクステフーデの音楽が持つ華麗さを引き出し、鮮やかで輝かしい大伽藍のような美しさと奥深さがあります。バランスのとれた知性と感性でブクステフーデの音楽と正面から向き合った、味わい深い録音です。


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