28 ドイツ・レクイエムの傑作
  ハインリッヒ・シュッツ/ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン
  Heinrich Schutz(1585-1672)/Musikalische Exequien

1635年に亡くなったドイツのロイス公は、生前に自らの葬儀について細かく指示をしました。それに基づいて葬儀用の音楽を依頼されたシュッツが1636年に作曲したのが、《ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン》です。この曲は、1636年2月の公の葬儀の際に演奏され、ほどなく完全な楽譜が出版されています。

《ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン》は「音楽による葬送」と訳される、ドイツ・プロテスタント教会のためのドイツ語による葬儀用音楽です。制約の多い中で書かれたにもかかわらず、この曲はシュッツの代表作のひとつになりました。

ハインリッヒ・シュッツは、17世紀ドイツを代表する偉大な作曲家であり、高度な技巧と深い知性との結合を目指した、後のドイツ音楽の基礎を確立した音楽家でした。30年戦争の荒廃の中で作曲された彼の作品は、若い頃に学んだヴェネツィア楽派の要素を保ちつつも、余分なものをすっかり剥ぎ取ったような、堅実で真摯な響きを持っています。

《ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン》は、どこか近づきがたい厳しさを感じさせながらも、聴き終わった後の感動の深さは比類がない、ドイツ・レクイエムの最初にして、最高の作品のひとつです。


 
【 Reference Disk 】
ヘレヴェッヘ盤 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮/シャペル・ロワイヤル
Philippe Herreweghe :director/La Chapelle Royale
 《Musicalische Exequien》
 1987年録音 (仏)harmonia mundi [HMC 901261]

今までに録音された《ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン》の中で、現時点で最上の録音がこのヘレヴェッヘ盤でしょう。感情の表出の少ない純音学的なアプローチが、かえって内圧の高さを感じさせ、厳しく強靱なシュッツの音楽をくっきりと表現しています。

エーマン盤 ヴィルヘルム・エーマン指揮/ヴェストファーレン聖歌隊
Wilhelm Ehmann:director/Westfalische Kantorei
 《Musikalische Exequien》
 1960年録音(独)Cantate [C 57602]

古い録音で今風なオーセンティックさはありませんが、当時シュッツ研究の権威だったエーマンの演奏には、慈しむような味わいの深さがあります。合唱の暖かく深みのある歌声を生かして、作品の清澄な美しさを優しく優雅に再現しています。

リヒター盤 カール・リヒター指揮/ミュンヘン・ハインリヒ・シュッツ合唱団
 《ムジカーリッシェ・エクセクヴィエン》
 1953年録音 Archiv [POCA 3051]

1953年という録音の古さは否めませんが、当時、若干27歳だったリヒターのデビュー盤でもあるこのディスクでは、後のバッハを彷彿とさせるような統制感のある演奏を聴くことができます。抑制された表現ながら深い情感をたたえた合唱は特に印象的で、真摯な祈りを感じます。


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