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ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)という楽器は一見したところヴァイオリンと非常によく似ています。けれど、響孔がC字型であること、弦の数が4本ではなく6本であること、指板にギターのような弦押さえ(フレット)がついているなど、構造的にもかなり違っていている上に、チェロのように両膝に挟み込んで演奏されます。
ルネサンス時代にサロンや宮廷での合奏用楽器として発達したヴィオールは、バロック時代になるとイタリアでは早々にヴァイオリンに取って代わられましたが、イタリア風のオペラがほとんど発達しなかったフランスやイギリスでは、ヴァイオリンよりも柔らかく典雅な響きが長く愛好されました。
ルイ14世のヴィオール奏者として仕えたマラン・マレは、その生涯でヴィオールのために550曲あまりの独奏・合奏曲を作曲しました。それらは全5巻からなる曲集に納められていて、中でも第2巻に納められた『スペインのフォリア』、それぞれの楽曲に〈トルコの少女〉〈迷宮〉〈アラベスク〉などの魅力的な標題を付された第4巻・第2部の『異国趣味の組曲』、ナレーション入りで手術の様子を描いた第5巻の『膀胱切開手術図』などは特に有名です。
優美で繊細な装飾、軽やかで柔らかな旋律、エスプリに満ちた標題をもったマレのヴィオール曲は、当時のフランス宮廷音楽の洗練された趣味を教えてくれる美しい音楽です。
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