24 静謐な祈りの音楽
  マルカントワーヌ・シャルパンティエ/ルソン・ド・テネブレ
  Marc-Antoine Charpentier (1643〜1704)/Lecons de tenebres

イタリア留学中にオラトリオで有名なカリッシミに学んだマルカントワーヌ・シャルパンティエは、17世紀、ルイ14世時代のフランスの作曲家の中でも、宗教音楽の第一人者として知られています。

『ルソン・ド・テネブレ』は、旧約聖書の「エレミアの哀歌」につけられた音楽で、「テネブレ(暗闇の朝課)」とは、復活祭に先立つ水木金の「聖なる3日間」に暗闇で行われる朝課の事です。その最後には13本のロウソクを1本ずつ消していき、暗闇になって終わりますが、13本のロウソクは13人の使徒を、暗闇はキリストの死を象徴すると言われます。

復活祭前の聖週間には世俗的な音楽の演奏は禁止されたため、17世紀のフランスではこの期間に人気歌手たちがこぞってが『ルソン・ド・テネブレ』を歌いました。そのため、多くの作曲家によって名曲が残されています。けれど、シャルパンティエは世俗音楽的な表現を交えずに、あくまでも、キリスト教の精神を純粋に描いて宗教音楽として作曲しました。

シャルパンティエの宗教音楽な中でも、『ルソン・ド・テネブレ』はどちらかと言えば地味な曲で、必ずしも万人向きの音楽とは言いがたいかもしれません。けれど、その地味な上にも地味な音楽の中からほのかに立ちのぼる、優しさや慈しみの色合いが忘れがたい印象を残します。静謐のうちに深い祈りを感じさせる、しみじみと美しい音楽です。


 
【 Reference Disk 】
パルルマン・ド・ミュジーク盤 マルタン・ジェステル指揮/パルルマン・ド・ミュジーク 
Martin Gester: direction/Le Parlement de Musique
 《OFFICE DES TENEBRES》
 1991年録音(仏)opus111 [OPS 10-003]

水木金の3日間のテネブレからの抜粋盤。リコーダーの柔らかな響きと、2人のソプラノの優美で軽やかな歌唱が絶妙な表情を作り出していて、心にしみいるような美しさが感じられます。どこまでも柔らで優しい印象があり、その詞が国の荒廃を嘆く「エレミアの哀歌」であることさえ忘れてしまいそうになるほど美しい録音です。

コンチェルト・ヴォカーレ盤 ルネ・ヤーコプス/コンチェルト・ヴォカーレ
Rene Jacobs/Concerto Vocale
 《Lecons du Mercredy Sainct》
 1978年録音 (仏)harmonia mundi FRANCE [HMC901005]

コンチェルト・ヴォカーレは水木金の3日間のテネブレをそれぞれ1枚ずつ録音しているのですが、現在 harmonia mundi のカタログには《聖水曜日》しか載っていないようです。けれどこの1枚だけでも、その滋味の豊かさを感じることができるでしょう。あくまでも淡々としながらも柔らかさに満ちた、優雅で軽やかな歌唱が印象的な録音です。

イル・セミナリオ・ムジカーレ盤 ジェラール・レーヌ/イル・セミナリオ・ムジカーレ
Gerard Lesne/Il Seminario Musicale
 《Lecons de tenebres》
 1993年録音(英)Virgin Classics [VC 7 59295 2]

レーヌが主催するイル・セミナリオ・ムジカーレも、収録曲は違いますがコンチェルト・ヴォカーレと同様に3枚のテネブレを録音しています。参考盤は《聖金曜日》のもの。上記のふたつの録音と比べるとシャープな印象があり、全体的にもう少し柔らかさが欲しいような気もしますが、レーヌの艶やかな美声と演奏の巧みさは強い説得力を感じさせます。

コンセール・スピリチュエル盤 エルヴェ・ニケ指揮/コンセール・スピリチュエル
Herve Nique: directiont/Le Concert Spirituel
 《Lecons de tenebres》
 2001年録音(西)GLOSSA [GCD92160]

ニケとコンセール・スピリチュエルによる『ルソン・ド・テネブレ』は、《聖水曜日》の3つのルソンが納められています。カウンターテノール、テノール、バリトンが各二人ずつに、バイオリンとトラベルソ、通奏低音という編成ですが、特にテノールの美しさが際立っています。骨格のはっきりした低音の響きが美しい、深みのある印象的な録音です。


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