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ジャン・バテスト・リュリ(1632〜87)は、イタリア出身ながら「太陽王」ルイ14世の宮廷で権勢を振るった音楽家でした。自分の地位を確保するためなら、他人を妨害することなど平気な権力欲の強い陰謀家でもありましたから、最初は協力者であり、後にライバルとなった劇作家のモリエールが急死したときなどは、リュリが犯人ではないか、という噂さえ流れたといいます。
けれど、リュリの作曲家としての腕が超一流であったこともまた事実でした。リュリの死後に催された演奏会で、彼の作曲したオペラの一節を聴いたルイ14世は、「これこそ余の趣味だ」と言ったと伝えられています。
一口にオペラと言っても、フランスのオペラはイタリアのものとはだいぶ様相が違います。ルイ14世がダンス好きだったことからバレー・シーンが必ず入っていたり、フランス語とイタリア語の違いからリズムの扱いや旋律の特徴も異なります。そしてなによりも、朗々とした「アリア」がほとんど無いことがイタリアのオペラとは決定的に違う点でしょう。このフランス様式のオペラを確立したのがリュリでした。
《アティス》は、リュリが44歳の頃に5作目として書き上げたオペラですが、彼の数あるオペラの中でも傑作の誉れの高い作品です。5幕にわたって展開される美少年アティスとニンフのサンガリードの悲恋の物語は、バレーを初めとした様々なスペクタクルに彩られた壮麗さと同時に、微妙な陰影を持った繊細な美しさを感じさせてくれます。
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