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16世紀、フェリペ2世(1556-98在位)の時代にミサ曲やモテトゥスなどの宗教音楽の分野で優れた作品を残したトマス・ルイス・デ・ビクトリアの作品は、保守的なポリフォニー形式で書かれているにもかかわらず、スペイン的な陰影を感じさずにはおきません。
ビクトリアは4声と6声の2種類のレクイエムを作曲しまいしたが、《6声のレクイエム》は彼が晩年に使えたスペインの皇太后の葬送のために作曲された作品です。通常のレクイエムに加えて何曲かの死者のためのレスポンソリウム(応唱)という曲を付加して、《死者のための聖務曲集》としてまとめられています。
パレストリーナ的な透明感とスペイン的な神秘性が融合した、力強さと深みを感じさせる独特な美しさが、ビクトリアの作風の特徴と言われています。
長く持続して歌われるグレゴリオ聖歌の定旋律の上に各声部が厚く絡み合い、息の長い大きな流れとうねりをもってもつれ合いながら高みへと上昇しようとする音の流れは、エル・グレコの絵に感じられる神秘性とどことなく共通したものがあるように思えます。 スペイン人ならではの強い情感を感じさせてくれるビクトリアの6声のレクイエムは、音楽史上にあまた存在するレクエムのなかでも、名品のひとつだと言えるでしょう。
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