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ラッススはフランドル楽派後期の代表的な作曲家であり、パレストリーナと並んでルネサンス音楽の最後を飾る作曲家のひとりでもあります。作風としてはフランドル楽派の音楽を継承し、音楽形式はどちらかと言えば保守的な傾向があります。
けれど、その組み上げられた構成が一歩間違えば崩れ落ちかねないような、強い表現意欲をもった曲想はバロック的なものを志向していて、強い感情と一種の危うさが感じられます。
《聖ペテロの涙》はラッススの最後の作品です。その晩年には「憂鬱症」に陥っていたラッススが、イタリアの詩人タンシッロ作の宗教連作詩集《聖ペテロの涙》から選んだ20篇のテキストに作曲したこの曲は、「宗教的連作マドリガーレ」と呼ばれています。
テキストの土台になっているのは、福音書の「ペテロの否認」のエピソードです。ペテロはイエスから「あなたは今夜、鶏が鳴く前に、三度私を知らないと言うだろう」と予言され、これを否定するのですが、いざイエスが捕らえられると予言通りの行動をとってしまいます。イエスの予言通りになったことに気づいたペテロは、外に出て号泣したのでした。
ラッススが《聖ペテロの涙》の序文を書いたのは、その死の三週間前であったと言われています。ラッススがこの曲を自分の最後の作品と自覚して作曲したかどうかはわかりませんが、確かに「白鳥の歌」にふさわしい、劇的な緊張感に満ちた作品です。
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