10 音楽のマニエリスム
  ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ/教皇マルチェルスのミサ
  Giovanni Pierluigi da Palestrina(1525?-1594)/Missa Papae Marcelli

《教皇マルチェルスのミサ》に関しては有名な逸話があります。曰く、宗教改革の嵐の中、カトリック内部の自己改革を目指したトレント公会議(1543-63)において、すべてのポリフォニー音楽を教会から追放すべきだと主張する強硬派に対し、典礼にふさわしいポリフォニー・ミサ曲があり得ることを証明するために作られた、というものです。

この逸話からパレストリーナの代表作として取り上げられ、録音も多い《教皇マルチェルスのミサ》ですが、最近の研究ではポリフォニーを容認したトレント公会議の決定後に、公会議の設定にそって作曲されたことはほぼ間違いないとされています。

現在では、この曲をパレストリーナの代表作では無いとする見方が一般的になりつつありますが、それでもこのミサ曲が傑作のひとつであることは間違いないように思えます。

パレストリーナが得意とした自作や諸先輩のシャンソンやマドリガーレを再構成したパロディ・ミサでこそありませんが、複雑に絡み合う声部がガラス細工のような美しさを感じさせる、甘美で透明な響きを作り上げています。


 
【 Reference Disk 】
タリス・スコラーズ盤 ピーター・フィリップ指揮/タリス・スコラーズ
 《教皇マルチェルスのミサ》
 1980年録音 Gimell [PHCP 1903]

完璧なハーモニーで作品の細部まで明確にした録音。ソプラノを女声で演奏した清明な響きは、この団体ならではのものです。ポリフォニーの綾がくっきりと浮かび上がるような、繊細なレースを思わせる演奏です。

 
ウェストミンスター大聖堂聖歌隊盤 デイヴィッド・ヒル指揮/ウェストミンスター大聖堂聖歌隊
David Hill:director/Winchester Cathedral Choir
 《Miss Papae Marcelli》
 1987年録音 (英)Hyperion [CDA 66266]

量感のある合唱で大聖堂の雰囲気を伝える録音。ソプラノとアルトを少年合唱が受け持っています。合唱が厚い分、各声部の輪郭は明確さに欠けますが、ゆっくりしたテンポで悠然とした流動感を表現しています。

PCA盤 ブルーノ・ターナー指揮/プロ・カンティオーネ・アンティクァ
 《教皇マルチェルスのミサ》
 1978年録音 ASV [CRCB 1023]

プロ・カンティオーネ・アンティクァらしいほのぼのとした録音。彼らはこの曲を2回録音していますが、これは旧盤の方です。しっとりとした肌触りの中に豊かな音の造形美を浮かび上がらせて、渋い味わいのある演奏に仕上げています。


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