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《教皇マルチェルスのミサ》に関しては有名な逸話があります。曰く、宗教改革の嵐の中、カトリック内部の自己改革を目指したトレント公会議(1543-63)において、すべてのポリフォニー音楽を教会から追放すべきだと主張する強硬派に対し、典礼にふさわしいポリフォニー・ミサ曲があり得ることを証明するために作られた、というものです。
この逸話からパレストリーナの代表作として取り上げられ、録音も多い《教皇マルチェルスのミサ》ですが、最近の研究ではポリフォニーを容認したトレント公会議の決定後に、公会議の設定にそって作曲されたことはほぼ間違いないとされています。
現在では、この曲をパレストリーナの代表作では無いとする見方が一般的になりつつありますが、それでもこのミサ曲が傑作のひとつであることは間違いないように思えます。
パレストリーナが得意とした自作や諸先輩のシャンソンやマドリガーレを再構成したパロディ・ミサでこそありませんが、複雑に絡み合う声部がガラス細工のような美しさを感じさせる、甘美で透明な響きを作り上げています。
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