05 世紀末の「繊細」
   アルス・スブティリオール Ars subtillior

14世紀末のヨーロッパはペストの大流行や教皇のアビニョン補囚、西欧教会の大分列(シスマ)などが起こり、一種の危機的状況に陥っていました。

その混乱する世間に背を向けるように、南仏を中心とする各国の宮廷で発達していった複雑怪奇なリズムを持った音楽を「アルス・スブティリオール(より繊細な技法)」と呼んでいます。

20世紀以前では最も複雑なリズムと言われ、聴いていると現代音楽と錯覚しそうになることすらありまが、何はともあれ、一度はまるとなかなか抜け出せない迷路のような魅力を持った音楽です。

この音楽の魅力を初めて明らかにしてくれたのは、1972年に録音されたマンロウ指揮の《宮廷の愛 vol.2(14世紀後半の前衛)[EMI TOCE-11025]》だと思います。それ以後、特に80年代後半からは若い演奏家を中心に、特色のある演奏が多数録音されて来ています。


 
【 Reference Disk 】
アンサンブルPAN盤 アンサンブルPAN
Ensemble P.A.N.
 《ARS MAGIS SUBTILITER》
 1987年録音 (米)New Albion [NA 021]

いきなりサックスかと思うようなコルネットの音からはじまる録音。一曲一曲が丁寧に演奏されていて、アルス・スブティリオールの超絶技巧を充分に堪能させてくれます。同時に、感覚だけに流されない緊張感と乾いた叙情性が、曲の美しさを印象的に表現しています。

アンサンブル・オルガヌム盤 マルセル・ペレス指揮/アンサンブル・オルガヌム
Marcel Peres :director/Ensemble Organum
 《Codex Chantilly》
 1990年録音 (仏)Harmonia Mundi [HMT 7901252]

アルス・スブティリオールの代表作を集めた録音。男声アンサンブルによって美しさよりも技巧により重点を置いた演奏をしています。角張った印象がありますが、技術的な面の充実度はこれが一番かもしれません。

ウエルガス・アンサンブル盤 パウル・ファン・ネーヴェル指揮/ウエルガス・アンサンブル
 《フェビュスよ進め》
 1991年録音 SONY CLASSICAL [SRCR 8954]

男声による曲もありますが、どちらかというと女声による歌唱が美しい録音です。3曲目と8曲目の揺れ動くような歌唱は特に印象的。一種独特な柔らかさと静けさを感じさせる演奏になっています。


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