04 アルス・ノヴァの精華
  ギョーム・ド・マショー/ノ−トル・ダム・ミサ
  Guillaume de Machaut(1300?-1377?)/La Messe de Notre-Dame

キリスト教の最も重要な典礼(儀式)のひとつであるミサで歌われる曲は、はじめは全部グレゴリオ聖歌だったわけですが、やがて各章が単独に作曲され、ミサのたびにそれらが組み合わされるようになりました。

時代が下るにつれて、次第に一定の組み合わせが写本にまとめられるようになり、「ミサ曲」の概念が生まれて行くことになります。ひとりの作曲家がミサの通常文の全てを作曲したものを「通作ミサ」と呼んでいますが、ギョーム・ド・マショー(1300頃-1377)の『ノートル・ダム・ミサ』は、その「通作ミサ」の現存する最古の作品です。

同時に、14世紀中頃に作曲されたと推測されているこのミサ曲は、当時のアルス・ノヴァと言われる作曲技法がきわめて熟練した形で駆使された、代表的な作品であるとも言われています。

語尾を引っ張る独特な音の区切り方やデリケートで複雑なリズム、不協和音的なハーモニーなど、『ノートル・ダム・ミサ』は、それ以前のグレゴリオ聖歌とも、その後のフランドル楽派のミサ曲ともまったく違う、独特な響きを持った魅力ある音楽です。


 
【 Reference Disk 】

アンサンブル・ジル・バンショワ盤 ドミニク・ヴェラール指揮/アンサンブル・ジル・バンショワ
Dominique Vellard: direction/Ensemble Gilles Binchois
 《Messe de Notre-Dame》
 1990年録音 (仏)Harmonic [H/CD 8931]

グレゴリオ聖歌を補って、マショーの時代の「聖母被昇天祭のミサ」を再現した録音です。豊かな残響の中、柔らかなで繊細な歌唱は安らぎさえ感じさせます。お世辞にも入手しやすいとは言い難いのですが、これほど表情豊かな美しいマショーを、私は他に知りません。

ヒリアード・アンサンブル盤 ポール・ヒリヤー指揮/ヒリアード・アンサンブル
Paul Hillir: direction/The Hilliard Ensemble
 《Messe de Notre Dame》
 1987年録音 (英)Hyperion [CDA 66358]

細やかに神経が行き届いた美しい録音です。各声部の透明な響きが綾をなして絡みあり、不思議な静けさと躍動感とを同時に感じさせてくれます。あまりにも研ぎ澄まされていて硬質なガラスで出来たオブジェのような雰囲気もありますが、非常に完成度の高い演奏です。

オックスフォード・カメラータ盤 ジェレミー・サマリー指揮/オックスフォード・カメラータ
Jeremy Summerly: direction/Oxford Camerata
 《La Messe de Notre Dame》
 1996年録音 (香)NAXOS [8.553833]

多分、現在入手可能なノ−トル・ダム・ミサの録音の中で、一番オーソドックスな演奏ではないかと思います。硬めで乾いた歌唱が独特の緊張感を出しています。音の膨らみにはやや欠けますが、手堅く聴きやすい録音に仕上がっています。

アンサンブル・オルガヌム盤 マルセル・ペレス指揮/アンサンブル・オルガヌム
 《ノートルダム・ミサ曲》
 1995年録音 harmonia mundi FRANCE [KKCC 373]

この録音については、正直に言って初心者向きとは言いかねるように思います。ただ、この団体の特徴であるダミ声による“声明”のような演奏は、聴く者を否応なくその世界に引きずり込んでしまう、独特の力強さと魅力があります。聴きやすいとはお世辞にも言えませんが、刺激的で個性的な録音です。


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