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雅堵は唯から譲り受けたチケットに書いてある場所につきあたりを見回した。見た限り、やはり子どもが多く、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。
そんな場所に一瞬入るのをやめようかと思った雅堵だが近づいてきた子どもにそれをそしされた。
「兄ちゃん!遊ぼう!」
「え・・・・」
「ほら、こっち!」
言われるがまま、引っ張られるがままに雅堵はどんどんその室内に連れ込まれていった。部屋に入ると雅堵に気づいた子どもがどんどん近付いてくる。
「おりゃあ!」
「なっ、おい、やめろっ」
「ていやっ!」
子どもたちがどんどん雅堵の上に乗る。それは主に男の子だ。
「お兄ちゃんは私たちと遊ぶのーっ!」
「そうだよっ!どいてよーっ!」
そして女の子が雅堵の上の男の子たちを蹴散らす。男の子も負けるわけにはいかないと強く雅堵にしがみついた。
「わたすかーっ!」
「はなしなさいーっ!」
「お前ら、みんなで遊ぶって言うのはないのか?」
「無い!」
「あるわけない!」
雅堵の呼びかけにも両者睨みあったままである。溜息をつきながらも雅堵はされるがままになっていた。これ以上抵抗をしていればこっちがつかれる。それが雅堵の出した最善の策だった。
『こんにちはー!今日は人形劇を見に来てくれたみんなありがとう!さあ、もうすぐ始まるよ。座って座ってー』
ウサギの人形が出てくると子どもたちはすぐさま座りだした。みんな雅堵の近くに集まっている。
『それでは劇の始まり始まりーっ!』
「いやーっ!雅堵くん、来てくれてありがとう」
劇が終わってから一通り仕事をこなして気のだろう優子は少し髪が乱れている。
「べつに」
「それにしても子どもたちに大人気だね」
「なに?ねえちゃん、兄ちゃんのかのじょー?」
「そうだよー」
「けっこんするの?」
「どうだろうね?するのかもね」
「けっこんしきにはアタシたちにもおしえて!」
「どうしよっかなー?」
「奥西、嘘つくんじゃねえよ」
「だいじょーぶ。ほらみんな、お母さんが迎えに来てるよ」
「じゃあね、おにいちゃん、おねえちゃん!」
「じゃあなーっ!」
「うん、ばいばい」
子どもたちが帰った後優子は思い出したように雅堵に言う。
「本気にしないでね?」
「当たり前だろーが」
「でも2番目に雅堵くんは好きだよ?」
「1番は吟馬だろ」
「せいかーい。雅堵くん頭いいねー」
「わかりきってることだろ」
「そだね」
「ほら、お前もすぐバイトの時間だろ。行かなくていいのか?」
「大丈夫。今日は変わってもらってるんだ。このまま、どこか遊びに行こうよ」
「どこかにって何処だよ。それにバイトとかじゃない限り外には出られないんだから外に出るって言うことは無理だろうし・・・」
「そんなの関係ないよ?」
どこか楽しそうな優子の表情に雅堵は首をかしげた。雅堵はなんとなくわかった。優子がこの表情をするとき、優子はかならず、何かを仕出かそうとする。
「何をするんだ」
疑いの目で雅堵は質問をした。その雅堵に優子は雅堵が何かを感じたのに気づきさらににっこりと笑う。
「もちろん、強行突破に決まってるよ!」
「だれがそんな面倒くさいことするか」
「え、私と雅堵くん」
「俺はそんな面倒くさいことしない。教師に追いかけられたくはない」
「時には冒険も必要なんだよ?しょうがないな、じゃあ唯ちゃんたちのところにでもいこうか」
「それなら・・・ところであいつらは何の出し物してるんだ?」
その言葉に優子は驚いたように雅堵を見る。友達がどんな部活に入っているのかを聞いていなかったとは思っていなかったのだ。きっと、雅堵は唯が自分たちのいけない理由を聞いて唯たちが何の部活に入っているのかを聞いたのかと思っていたのだ。だが、唯の考えは外れた。
どうやら雅堵は人にあまり執着が無いらしい。
「聞かなかったの?」
「別に」
「普通聞くでしょ」
「それは女子だけなんじゃないのか?」
「そんなこと無いよ。うーん、まあいっか。さあ、行こう!」
そして優子に腕を引っ張られながら雅堵がついていく。そこで雅堵は驚いた。
唯と智騎の出し物だ。
その物体は口から何かを作り出していた。それはさまざまなお菓子やおもちゃなど。それはいいとしよう。だが、その物体の外見がグロテスクなのだ。目は飛び出そうなほどに大きい、そしてリアルだ。
言葉を失う雅堵の横で優子は楽しそうにお菓子をもらいに行こうとする。
「うわー、たくさんお菓子がある!行こう!」
「・・・あいつらの部活って何なんだよ」
「ボランティアだよ。今日は子供達にお菓子とかおもちゃとかを無料で配ってるんだ」
「・・・みためがすごくないか?」
「そうだね、すごいと思うよ。でも人気があるからいいんじゃないの?ほら、もらいに行こう」
「いや、俺はいい」
「えーっ。じゃあ、私はもらってくるから」
「おう」
駆け足で優子は行った。
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