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「すっかり暗くなりましたね」
「そうだな」
封斗の家に帰って来てからというのもどうしても落ち着かない明日香はとりあえずソファアに座っていた。こうして座ってから3時間たっている。幸い、封斗がテレビを付けてくれたので暇というわけではない。封斗は何かパソコンの前に座り仕事をしているようだ。
邪魔をしてはいけないと思い、明日香も黙っていた。
そして、幾らなんでも明日香はお腹が減ってくる。昼ごろから何も食べていないのだ。
テレビの画面を見ながらも意識はお腹の音を止めることに集中していた。なのでテレビの内容も頭に入ってこない。
その時、ベランダの窓があいた。
「封斗―。お前報告くらいしろって」
そこから出てきたのは雷斗だった。明日香は吃驚した。なんせ、ベランダから来たのだ玄関からではなく、ベランダから。そんな突然の訪問者にも封斗は特に気にもせずにパソコンに何かを打ち込んでいた。
「忘れてた」
「それは無いだろー。俺は研究所に行ってから市役所に行ったりしたりして大変だったんだからなーっ」
「すまん」
素っ気無い封斗の反応に雷斗は少々不満を持ったようだが先程から自分たちのほうを見ている少女に気づいた。
「あ、雨風が行ってた通りだ!本当にお前の家にしばらく泊まるんだな!俺は雷斗って言うんだけどよろしくなっ」
「あ、はい。小暮明日香です」
「封斗といてもつまんねーだろ?そうだ、飯って食った?」
「まだ、食べてません」
「・・・いつから?」
「お昼・・・ごろから・・・」
その言葉に雷斗は封斗の後ろに行き首を締め上げる。
「うっ、苦しい。なにすんだ、雷、斗」
「てめぇ、ちゃんと飯食わせてやんねぇといけねぇじゃん。俺らと違って腹減るんだからよお」
「わかった、お前やめろって、フードが脱げる」
手で自分のフードが脱げないように押さえている封斗を見て雷斗は呆れる。
「今はフードがどうのこうのって言ってる場合じゃねぇじゃん!」
それでも封斗はフードが脱げないようにしっかりと押さえながら講義を雷斗にした。
「仕事に夢中になりすぎて時間の感覚がわからなくなってたんだよ。それにお前、フードを馬鹿にするなよ。顔隠すためにはもってこいの代物なんだからな」
「いみわかんねぇよっ。お前の場合ただ単に顔出すのが恥ずかしいからだろうがっ!」
「ちがう、これは一つのファッションだ」
「だれもそんな格好してる奴なんかいねぇじゃん!そろそろ認めやがれ」
「それはお前が時代遅れなだけだ。だいたいお前、土足で人の家に入ってくるな」
「話をそらすな!今はそんなこと気にしてる場合じゃねぇ!」
いつの間にか雷斗も最初は封斗の首を締め上げていた手を離し二人は向かい合って言い争いをしだした。
その状況に困ったのは明日香である。
「2人とも、落ち着いてください。封斗さんのフードに関する執着はよくわかりませんが、雷斗さんも土足で家に入っては床が汚れしまいます」
呼びかける明日香の声は封斗と雷斗には聞こえておらず、2人の言い争いはまだまだ続いた。そしてその言い争いはある携帯電話の音で打ち切られる。
なったのは雷斗の携帯だった。携帯の画面をみて何か操作をするとさっきとは違う物言いで封斗に言う。
「行くぞ」
「わかった」
そして雷斗はベランダに走っていき、封斗はベランダに置いてあった靴をすばやく履く。
「明日香、冷蔵庫に一応食料入ってるから食べとけ、それと俺が帰らなかったらとりあえず寝とけ」
「わかりましたっ」
あわてて答えた明日香はふと、気づく。
「え、ここってマンションの6階・・・」
急いで明日香はベランダに出てみた、そこに広がっている景色は所々付いたビルなどの照明の広がる街の景色。どう考えても人が飛び降りてしまえば即死を免れなかった。
「すごいなー。身体機能とかが全然違うって雨風さんが言ってたけど、本当だったんだ」
しばらく下を見ていた明日香だが
「やっぱり怖いや、こんなところから飛び降りるのって」
そう言い部屋の中に戻ると窓を閉め、冷蔵庫の中を開けてみる。きちんと整理されているもののそのほとんどは、レンジで暖めれば出来てしまう物だった。
「なんか、栄養悪そうって言うかなんていうか・・・。でも食材だけでも困るからありがたいけど・・・料理、少しは勉強してみようかなあ、上手くできるかどうかは心配だけど」
適当に選んだものをレンジにいれて暖めて食べたあと明日香はソファアにすわりテレビを見る。
「先に寝てもいいんだよね。でも何処で寝よう・・・このソファアでいいかな?」
しばらくして眠気が襲ってきた明日香はそのまま眠りに落ちっていった。
「結構おとなしそうな女の子だな、あの子」
「実際、おとなしい」
「それはそれでいいじゃん。うるさいよりかは」
「でも話しにくい」
「だよなー。お前も初対面の人とはあんまりしゃべらねぇからな」
「うるさい」
「でも結構明日香のこと気に入ってるんだろー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる雷斗に封斗は拳を振り上げ殴ろうとする。
「わるかったってー。ほらほら、標的が見えてきた。仕事の始まりだぜ?」
「あとで絶対殴る」
「それは勘弁」
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