Deep Sea/Text






屋上




昼休み。
騒がしい教室を嫌い、屋上で弁当を食べるのが日課のリョーマは、
いつもの通りに、重い鉄扉を開けた。
眩しい陽射しを避け、日陰を探し、ドッカリと腰を下ろす。
赤いギンガムチェックの包みを開き、少しムッとする弁当の匂いに閉口する。
「なんだ、またハンバーグか・・・魚とか食べたいのに。」
文句を言いながらも、育ち盛りの中学一年生、音がしそうな勢いで口の中に消えて
いく。

「昼飯?」
耳慣れた声に振り向くと、不二先輩と手塚部長の姿があった。
「ちぃス。」
「お邪魔しちゃったかな?」
「いえ、別に。」
ノルマの牛乳2本分を喉に流し込みながら答える。
(不二先輩はちょっと邪魔だけどね)

「乾の言った事守って、ちゃんと飲んでるんだね。それ。」
「はぁ、まあ一応。」
いつもの適当な相づちを打つ。
(なんで、いつも一緒なんだよ、この二人は!)

「さて、僕らも食べるとするか。越前君迷惑そうだから、あっちに行こう、手塚。」
「そうだな。」
ゴフッ!と牛乳が逆流して、鼻の奥を痛めた。
「め、迷惑だなんて、おも、思ってないっスよ!」

「越前。」
目の高さに部長の顔がある。
「…え?」
なんで、こんな近くに?
ほんの数十センチ。手を伸ばせば簡単に届く距離。
骨張った手塚の指が、越前の顔を持ち上げる。
わぁ、睫毛意外と長いんだぁ。。。などと思っていると

「小学生じゃないんだから、こぼすな。みっともない。」
と、白い糊の利いたハンカチで、口元をゴシゴシと拭かれた。
「ほんの数ヶ月前までは、小学生だよ、手塚。」
不二先輩が嫌な事を微笑みながらを言う。
「ふ、不二先輩!!」一応、抗議のつもり。多分、この人には無駄な抵抗だけど。

「少し黙れ。ほら、落ちだぞ。」
白いハンカチにケチャップの染みが、点々と付いていた。
「…あ。」
「ごはん粒まで付けて。。。グラウンド走るか?」
右目下の部分に、チョイと指の感触を感じたら、
そのまま口元に運ぶ姿に・・・オレは妙な感覚を覚えた。

「まるで、お母さんだね。」
「勿体ないだろ、米は大切だ。」
「うん、そうだね。じゃあ、大切なお米を喰いますか。」
「じゃあ、越前。。。ん?」
手塚の左足に、がっちりと越前がぶら下がっていた。

「あの!ハンカチ!オレに頂戴…じゃなくて、洗って返す!」
「必要ない。」
「でも!」
「洗って貰えば?手塚。これからは男も洗濯くらい出来ないとね。」
「たかがハンカチ1枚だぞ?」
「最初はみんな、そんなところからだよ。」
「出来るか?越前」
「勿論っスよ!」
「そうか。じゃあ気長に待つことにするよ。頼むな。」
キッチリと畳まれた白いハンカチ(オレのケチャップ付き)が、オレの額の上に乗せられた。
ずっと見上げていたので、首が痛くなっていた事に今更ながら気が付いた。

昼食を終えて、二人はフェンスに身体を預け、午後の風を楽しんでいた。
「手塚」
「ん?」
不二は風で乱れた前髪を気にしながら空を見上げ、
手塚はフェンス越しにグラウンドを眺めたまま返事をした。

「……越前のこと、どお?」
「どおって……不二の心配する様な事はない。」
「そうかな。」
「そうだ。」
どちらともなく、手を伸ばし、背中合わせのまま、手を繋ぐ。

「それならいいけどね。」
(でも、不安は拭えない。僕にはあんなに真っ直ぐに進むなんて出来ないから。)
「不二は心配性だな。」
「君に関してはね。」

心配するなというのが、無理な話だよ、手塚。
もうすぐそこまで来ているんだ。僕の敵は。。。。

END


キオさんのお誕生日に「部長と天才」のイラストに合わせて作りました。
何塚なんだか、わからん話になってしまったなぁ。。。


モドル
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