Deep Sea/Text






覚醒/3




ちらちらと紅い舌先が見える。ワザと見せつけるかの様に、動かしているに違いない。
同性愛への嫌悪も不安も、腰を浮かせて脱がされるままに従ってしまった自分には考える必要さえなく、大石は自分の声を殺す事にただ必死になっていた。部屋の床に押しつけた耳元には、階下での菊丸の家族達の笑い声が、微かにテレビの音と共に届く。

「大石、静かにしててね」
そう言って微笑んだかと思うと、菊丸はゆっくりと口にふくんだ。
右手で軽く髪をかき上げ、目を閉じる。上気した頬と唇が上下する度に、悲鳴にも似た声を上げそうになる。

「大石っ!」
窘められても、すぐには返事をすることさえ出来ない。
息を吸い込んでも、キチンと肺に届いていないんじゃないだろうかと思うほど胸が苦しい。
「ご……ごめん」
やっとの思いで声を絞り出す。

「もお。下に聞こえちゃうじゃん!しょーがないなぁ」
菊丸は、大石の両手を掴むと大石自身の口元にあてがい、そのままギュッと押しつけた。
「ここから手を離しちゃダメだよ。離したら……もっと酷いコトしちゃうからね」
すでに濡れている人差し指を口に含み、菊丸は意地悪げに微笑んだ。

「……酷い…コト?」

「……されたい?」

言葉とは裏腹に、にゃははと菊丸は笑った。

「いや、その……そういう意味じゃ……」
「焦んない!焦んないっ!……んで、答え……出た?」
「……」
「こちらさんは、答え出てるみたいですけど?」
「……」
「もしもーし?大石くん?」

「……言わないと駄目?」

顔どころか、身体全体を真っ赤にしながら、大石は気恥ずかしそうに菊丸の顔を見た。下半身に何も身に着けていない自分と、シャツが乱れた程度で余裕でニコニコと笑っている菊丸を見比べ、より一層消え入りたい気持ちでいっぱいになった。

「ダメ」
「……英二ぃ」
「甘えてもダメなもんはダメ」
「……」
「言って。聞かせてよ、大石」
「……それじゃ、耳貸して」

「今さら〜?二人しかいないじゃん」
「今さらだから、恥ずかしいんだよっ!」

ぷいっと横を向いて、ふてくされた様に恥ずかしがっている大石の姿を見て、菊丸は吹き出さずにはいられなかった。
「わ、笑うことないだろっ」
「大石っ…おまえってやっぱり可愛いヤツだな」
「か、か、可愛いとか言うな!」
菊丸は笑いをこらえながら、大石に向かって両手を差し出した。反射的に、大石もそのまま自分の手を乗せると、菊丸はその手を先ほどと同じ場所にあてがった。

「今度は途中で止めないから、覚悟しててね。……もし、手を離しちゃっても、それはそれで楽しみだよね。念入りに可愛がってあげちゃうもんね!」
大石の膝に手を掛け、両膝を開かせながら、菊丸は「にゃはは」と笑った。



END


Macが吹っ飛びまして、Winで一から出直した3回目です。
前回は9月ですから…ははは。忘れられてたかなーと。
兎に角、初『菊大』。お気に召していただけたら幸いです。



モドル
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