Deep Sea/Text






休日









やばっ!10分も過ぎちゃったよ!
これもあれも、みんな、ちぃ兄ちゃんが悪いんだよぉー!
出かけるってのに、何時までもドライヤー使ってるしぃ。
絶対、もお居る。
約束の時間より、いっつも、絶対、20分は前に来るんだもん。
今、行くから、もお少しだけ待ってろぉー!


自宅から全速力で駅までの道のりを走ってきた菊丸は、
ようやく最後の角をまがり、待ち人に出会えたのは
約束の11時を15分過ぎた時だった。




紺のTシャツにブラックジーンズ。
全体をすっきりとまとめ、袖口からは黒を覗かせ
なぜか足元には履き古したテニスシューズの大石は
ガードレールに軽く腰掛け、ぼんやりと流れる改札の人達を眺めていた。


「大石っ!」とりあえず、叫ぶ。
「遅いぞ、英二。」と笑いながら、切符を渡された。
あいかわらず、準備万端なヤツだ。



今日は久しぶりに部活のない休日で、
折角だからと大石を誘って、少し大きな街まで
参考書やテニスグッズを見に行く事にした。

電車で出かけるのは、たかだか3つ先の駅でも
「お出かけ気分」で、なんだか楽しい。
いつもの見慣れたウェアや制服でない大石を見るのも
久しぶりだなぁーと、まじまじと見てしまう。


なに?って顔されるけど、黙っとく。
見とれてた、なんて絶対言わない。
走ったせいで汗ばんだ身体に、車内の冷房が心地よく、
3駅なんて、ちょっと早すぎ。



到着したら、まずマックで腹ごしらえ。
小遣いの少ない俺らには、マックってありがたいよなーとか
言うと、英二は買い食いしすぎっとか、叱られた。
なんだよ、もお!



ぶらぶらと街を散策。
一応、大石のアドバイスを聞きながら参考書と問題集も買った。
親から別口で貰ったお金とはいえ、勿体ないなー、とか思ってしまう。
わかんなかったら、教えてやるからなって、余裕あってムカつく。
でも、頼りにしてる。手塚じゃ怖いし、不二は・・・だし。


割と広めの公園で一休み。
木陰を探して、うろうろしていると、俺の愛すべきアイス発見!
苺に、チョコに、バニラに、レモンに、オレンジに。。。
でも、さっき買った参考書のせいで、財布はかなり厳しい。
チラッと大石を見てみると、しょうがないなぁって顔してる。


「大石っ!俺、食べたい!」
「駄目。」
「大石ぃ〜、食べたいよぉ〜、アイスぅ〜」
「・・・まったく、1つだけな。」
「全部っ!」
「全部は駄目。俺の金が無くなるよ。」
「んじゃ、3つ!3つ!今度の部室掃除手伝うから!」
「ホントか?」
「まかせてにゃん!」
「にゃんとか言うと、嘘臭いよ、英二。」
真顔で言うなよ。


いつまでも決まらず、五月蠅い二人に
売店のおばちゃんは、2つの値段で3つにしてくれた。
ふふふ、俺の人徳ってヤツだよね。



やっと見つけた木陰のベンチは、公園の遊歩道から少しズレてて
落ち着いて、アイスを食べながらいろいろと喋った。


「英二、アイスが顔についてるよ。」
「え?どこ?」
一応、口の周りをペロペロと探してみるけど
特に味がしない。
うーん。とか考えてると、ぐいっと腕を取られて引き寄せられた。


口元のほんの横を、ペロって、柔らかくてあったかいものが触れた。

「苺だな、この味。」と、しれっと言う。

ひとりで赤い顔してて、俺、馬鹿みたい。
大石は、にこにこと余裕の笑顔を浮かべてて、楽しんでる。


大石くん、後でみてなさい。アイス3つ分じゃ済まないよ。
この菊丸英二様を怒らせると怖いんだよ。
とか言っても、「はいはい」って笑ってる。


あーもおーっ!
次は絶対勝つ!
見てろ!
大石秀一郎!!



END
キオの絵とリンクしてます。ていうかこっちにも貼ってみたり。
■コメント/ヒダリ■



モドル
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