Deep Sea/Text






真昼の決闘/3








5分後、5人はテニスコート内にいた。

「ところで越前君、ちゃんとあの本読んだんだろうね」
「あの本って?」
「『初めての方のダブルス』」
「・・・・・・不二先輩・・・」

菊丸や乾も最初は止めたが、不二とリョーマのあまりの気迫に圧倒され、さらに桃城に事情を聞いて、『それは止めても無駄だな』と諦めた。
乾などは、珍しいデータが取れそうだと言って、結構喜んでいるようだ。
他の部員達は、詳しい事情はわからないまでも、この珍しいカードに興味津々で、ぐるりとコートを囲んでざわめいてる。

「・・・やれやれ。仕方がない、越前君、今日はお互い協力していこうか」
「了解っス。あの様子だと結構枚数あるみたいだし、山分けっスよ」
「そうだね。ところで、まん中の球はどっちが取るか、もう覚えたよね?」
「わかってますって!フォアっしょ」

いくらダブルスが苦手でも、ペアが不二でも、ことテニスになればリョーマには何の迷いも不安もない。もう、心はテニスでいっぱいになっているようだ。
その自信に溢れた姿を見て、不二は少しだけ笑った。

「さてと、始めようか。挑戦者だし、アンタらにサーブあげるよ」
「それはどうも・・・んん、そうだ、言い忘れましたけど」
「?」
「写真ですけど、結構沢山あるので、ポイントを取るごとに一枚ずつ差し上げましょう。『ポイントを取った人』にね」
「!!!」
「んふふふふ・・・さあ、では、はじめましょうか」

「・・・不二先輩・・・」
「何?」
「俺、先輩には負けませんから!」
「越前君、相手が違うんじゃない?・・・僕も負けないけどね」

「うーん、なかなかやるね、観月も」
「乾、感心してる場合じゃ・・・」
さっきまでの協力体制はどこへやらの雰囲気になった二人を見て、桃城たちは思わずため息をついた。
と、その時。

「おいみんな・・・?何してるんだ・・・?」
「あ、大石先輩・・・と、部長!」

関東大会の抽選会を終えた、手塚と大石がコートに現われたのである。
尤も、今日は抽選会のため部活自体は自主練習ということになっていたから、ふたりともジャージではなく、開襟シャツに制服のズボン、スポーツバッグという姿である。
大石が、手におそらく組み合わせ表のコピーであると思われるものを抱えているところを見ると、コートにいる部員達に早く組み合わせを教えようと、そのまま来たのだろう。

「なんだ、この騒ぎは」
「わわわ、お、おっかえりー!早かったね!ど、どこになった?第一試合の相手!」
「英二、誤魔化すんじゃな・・・ん、観月、と・・・裕太君?なんで青学に?」
「・・・何をしている、ここで」

驚く大石と、うさんくさげにこちらを睨んでいる手塚を見て、観月は大袈裟に肩をすくめてみせた。

「おやおや・・・邪魔がはいってしまいましたね。仕方がない、
今日のところは失礼しましょう」
「待て観月!おい、これは一体どういうことなのか、説明してくれ」
「お、大石センパイ!いやその、なんでもないっすよ!ねえ、エージ先輩!」
「う、うんうん、そう、別に手塚の写真なんて賭けてな・・・ぶっ!」
「実は裕太が遊びに来てくれてね・・・いい機会だからちょっと試合でもしない?
ってことになったんだよ。自主練だし、どうせだから越前君の苦手なダブルスと思って。そうだよね?桃」

(不二先輩すげえ・・・あんなにスラスラと嘘が、しかも表情全く変わって無え!)
左手で菊丸の口を押さえ付けたまま、笑顔で聞いてきた不二に対して反射的に頷きながら、桃城は妙に感心した。
大石は相変わらずきつねにつままれたような顔をしているし、手塚は絶対信じていないという様子だったが、他校生の前で内輪もめはどうかと思ったのか、それとも不二の弟である裕太がいたためか、とりあえず何も言わなかった。
そんな中、オロオロする裕太に指示をだしながらさっさと荷物をまとめ、悠然とコートを出たところで観月は振り返り、言った。

「今日は楽しかったですよ、不二君、越前君・・・。機会があれば、是非また」
「・・・」
「ああそうだ、これくらいはタダで差し上げましょう、遠慮せずどうぞ」
「あっ・・・!」

観月の手を離れた『例の』写真が、ふわりと不規則な弧を描いて空を舞った。
リョーマは猫のように俊敏な動きで飛び出し、素早くその手につかんだ・・・
・・・ように見えたが、その寸前で横から伸びてきた長い腕と指が、それをさっと奪い取った。

「うあ、部長っ!」
「なんだ?これは」
「あー、み、見ちゃダメっスよ!」

リョーマの制止を聞き入れるはずもなく、手塚は写真をぴらりと表に返した。

「・・・・・・!!!」
「わわわわ・・・お、俺知ーらねっ!」
「コラ逃げるな桃っ!ズルイぞひとりだけ!・・・ってあれ、そういえば不二は?」
「・・・あーっ、逃げた!いつのまに!」

すでにコートに不二の姿はなく、残されたのは逃げ遅れたリョーマとレギュラー陣、
そして不運にも居合わせてしまった部員達のみだった。

「越前っ・・・!お、お前というやつは・・・!」
「部長、違、違うって、撮ったの俺じゃないっスよ!それは・・・」
「黙れ!!全員グラウンド20周!越前は30周してこい!」
「あ、あのさ、手塚・・・それ、何が写ってるの?」
「・・・菊丸!お前も30周だ!」
「うわあ、八つ当たりだよー!今日は自主練なのにー!」

迂闊なことを口走った菊丸は、己と不二の両方を呪ったが後の祭りである。
菊丸が飛び出すのを合図に、皆一斉に逃げるように走りだしていった。

*********
「んふふふふ・・・大成功でしたね」
「観月さん・・・もしかして、手塚さん達が帰って来る時間、わかっててやったんですか?」
「当然でしょう、裕太君。会場に送った部員と、携帯で連絡をとってましたからね。
ついでに、彼等の第一試合の相手が氷帝学園だって事も知ってますよ。」
「え!そうなんですか?ま、まさか観月さん・・・氷帝に青学を撹乱するよう頼まれたとか・・・」
「全く君は何を言ってるんですか。僕が氷帝のために何かをするわけないでしょう」
「じゃあ、なんであんなこと?」
「不二君への嫌がらせに決まってるでしょう。ふふふ、これで少しは胸のつかえがおりました」
「は、はあ・・・」

じゃあ、写真もわざわざそのために撮ったのか・・・?と脱力する裕太を後目に、観月は軽い足取りで歩いていった。
そのまましばらく歩いた後、ふいに観月は言った。

「それに、いくらなんでもあんなことで青学をかく乱できるなんて、思ってませんよ。
まあ、子供の悪戯程度ですね」
「たしかにそうっすね。あいつら、強いから・・・」

観月はジロリと裕太を睨んだが、それ以上何も言わないまま、先を歩いて行った。
(それにしても・・・あの写真、何が写ってたんだろう。兄貴、目の色違ってたし・・・)
今度は兄の方がネガでも奪いにルドルフへ乗り込んでくるかもしれない。
兄貴との試合はやりたいけれど、なんだか面倒なことになりそうだ、
そう思って裕太はげっそりとため息をついた。

END


なんだかよくわからない代物になってしまいましたが、キオのお誕生日リク
『不二VS観月』と、いうことで…こ、こんなんでいいですか!?
こんなただ馬鹿なだけの話を3ページ分も書いてごめんなさい!わあ切腹?
書く前は、『観月って言われても何書いてイイかわかんねえ』とか思ってましたが、
書いてるうちに、愛しくなってきました(笑)裕太は気の毒ですが。
写真に何が写ってたかは、想像にお任せします。御自由にどぞ。



モドル
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