Deep Sea/Text






部誌




「ねぇ、先輩。部誌って、いつも先輩が書くもんなんスか?」
一日の部活も終わり、部員達が各々着替えをしている最中、
リョーマは、興味深げに大石に声をかけた。
「そういう訳じゃないけど、なんとなく書かないとオレ自身が落ち着かないし、
かといって、別のヤツに頼むのも・・・なぁ」
くるりと周りを見渡しながら、大石は軽い溜息をついた。


ふーん、とリョーマは、大石ににじり寄りながら、
部誌の内容をのぞき込んでみた。
天気や参加部員名、後は事細かく練習メニューの内容が、
レギュラーとそれ以外の部員とに分け、几帳面な字でびっしりと書かれていた。
「なんか、めんどくさそうっスね。オレには無理。」
「そんな事ないぞ。一度書いてみるか?」
書く手を休めて、シャーペンを持ったまま
大石は、笑って答えた。


ほら、と席をリョーマに譲り、大石自身は後ろに立ち、まるで先生と生徒の様に
書く場所、内容、などを丁寧に教え始める。
「先輩、ここ、何書くの?」
「ああ、ここは柔軟の種類と回数だね。憶えてる範囲でいいから、書いてみて。」
「いいっ!?そんなの憶えてないっスよ!」
「大丈夫。よく思い出して。」
ポンと肩に乗せられた手が、大きくて思ったより厚みにのある事に、
今更ながら驚いた。
・・・さすがだよな、リョーマは心の中でひとり納得した。


「おい!おい!越前!」小声で、リョーマの袖をひっぱりながら、
桃城が緊張した面もちで、二人の間に割り込んできた。
「なんスか、桃先輩!オレ、今忙しいんっスよっ!」
「やばいよ、もうじきエージ先輩が戻ってくるからさっ!」
「だから、何なんスか!」
「だから、やばいって!」



「誰がやばいってぇ〜〜?」
ラケットで肩をポンポンと叩きながら、夕陽を背に
不敵な笑みを浮かべながら、菊丸が部室に姿を見せた。


「やべっ!先輩、越前、お先にっ!」慌てて、後ろ手に自分のロッカーを
乱暴に閉め、逃げる様に桃城は姿を消した。
「おチビ、何してんの?」菊丸にしては、努めて冷静にゆっくりとした口調で
リョーマに詰め寄った。
「いや、その、部誌の書き方を大石先輩に教わってたんスよ。」

「ふぅ〜ん、で、大石ぃ〜その肩の上の手は、にゃにかなぁ〜?」
「えっ!?」
「このお手手は、にゃんですか?」
リョーマの肩の上にあった大石の手の甲を、
菊丸は静かな笑顔でギリギリとつまみ上げた。
「い、痛いって、英二っ!!」
「大石ぃ〜説明してみぃ。」
「英二〜っ!!」



やれやれと思いながら、リョーマは
「菊丸先輩、俺達別に、何も疚しい事なんて、無かったっスよ。」
と笑顔で答えた。
少し、意地悪な気持ちも込めて。
「ふふ〜ん、おチビも言うじゃん。」
「そうっスか?普通っスよ。」
「まあ、今日のトコロは見逃すから、おチビはとっとと帰って寝なさい!」
「はいはいっと」学ランと、テニスバッグを手に取り、
リョーマはドアに向かった。


「大石先輩、この続きは菊丸先輩のいないところで、ゆっくりお願いしますね。」
とびきりの笑顔を大石に向け、リョーマは素早くドアを閉めた。
(いいじゃん、少しくらいさっ)



何時の間にやら、二人以外全員姿を消した部室。
大石の処遇は、菊丸のみぞ知る。




END
これはいわゆる「リョ大」ですかね?「大リョ」??
「部誌」ってどんなものが書いてあるかさっぱりなんですが
大石って、意味なく細かいトコまで書いてそうなんで。。。苦労人だから。



モドル
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