Deep Sea/Text






第1章




ガタガタと窓のなる音で、手塚は目をさました。
頭がぼおっとする。顔のすぐ下に、木の感触があった。
眼鏡がずれているらしい。視界がぼやけている。

(俺は…何をしているんだったか…)

今自分が置かれている状況がつかめず、手塚はしばらくそのままじっとしていた。

(たしか…バスで…そしたら急に眠くなって…)

思い出した。

どこかの団体が開いた中学生テニス親善大会だかなんだか、そんなかんじの企画に招待されて、青学テニス部レギュラー及び応援要員数名で、バスに乗って移動していた、その途中。激しい眠気に襲われて…その後の事は、覚えていない。

(ここは、どこだ…?)

ゆっくりと体をおこし、眼鏡をかけなおすと、手塚はあたりを見回し、驚いた。
そこはどこかの学校の教室らしく(青学でないことは確かだ)、自分の他にも大勢の生徒が机に座って眠っている。
見なれた青学レギュラージャージのメンバーの姿に、その他もどうも見た事のあるジャージの生徒ばかりだ。不動峰、ルドルフ、氷帝、山吹…たしか、今回の企画に招待されている学校のはず。
何が起こったのか、さっぱりわからない…。

「目、醒めた?」

声のした方を向くと、そこに不二の笑顔があった。

「不二…」

いつもと変わらぬ不二の笑顔を見て、少し手塚は安堵した。

「不二、一体これはどうなってるんだ」
「さあ…僕も、少し前に目が醒めたんだけど…何が起こったんだろうね…」

そのうち、他の生徒達も次々と目覚め、教室は少しずつにぎやかになってきた。あちこちから、疑問や不満の声があがっている。
手塚の座っている列の一番前の席から、菊丸が手を振っている。それに答えて手を振り返している大石は、胃のあたりを押さえてしかめ面をしていた。
すると、教室の前の扉ががらっと開いて、若い女性が1人と男が数入ってきた。全員の目が、一斉にそこに集中する。

「あ…芝さん!?」

叫んだのは、カツオだ。

「ハーイみなさん、目が醒めたー?近くに寝てるコがいたら、おこしてあげてね!」

場違いに明るい声の主は、月間プロテニス新人記者、芝佐織女子だった。そして、芝の横にいる男達の手に握られているのは…銃だ。教室の騒ぎが、一層大きくなる。

「一体どうなってんだよこれは」
「みんな静かにー!これから大事なお話がありまーす!良ーく聞いて〜」
「えっと…?」
「ねー、帰っていい〜?」
「はあいそこ、文句垂れない。では、親善テニス大会をはじめます」
「ああ…?」
「ルールは簡単。ただ、みんなで殺しあいをしてもらうだけでーす」
「………ハア!?」
「って、だからテニス大会だろ?」
「ハイハイ静かに!もちろんこれはテニス大会よ。だから、テニスで殺しあいしてもらうのよ。簡単でしょ?」
「ふざけんな!テニスで人が殺せんのは越前と亜久津くらいだっつの!」
「どういう意味ッスか、桃先輩」
「それ以前に、なんでそんなことしなきゃならないわけ…?」
「大体、誰が企画してんだよ、これは!」
「それは秘密。大人には色々と事情があるの。ちなみに、月刊プロテニス協賛よ」
「協賛すんな!」
「さて、本題に戻るわね。今みんながいるここは、とある島なの。住民は誰も残っていません。無人島です。この中で、みんなに殺しあいをしてもらいます。そして、最後に生き残った1人だけが、家に帰れるわ。そこでみんな、手首に注目ー」

みんな、一斉に自分の手首を見た。手塚が左手に目をやると、いつもしている自分のリストバンドははずされ、代りに鈍いグレーの金属製のリストバンドがはめられていた。

「そのリストバンドには、センサーが組み込まれていて、みんなの居場所及び、生死の確認ができるようになっているの。つまり、みんなの動きは、こちらで逐一監視できるってわけね。あ、外そうとすると1万ボルトの電流が流れて黒焦げよ」
「…」
「今から、みんなに武器の入ったバッグを渡します。武器と言っても、こそこにいるお兄さん達(月刊プロテニスアルバイト陣)が持っているようなコワイ物は入ってません。テニスボールが20個ずつ、入ってます。ただし…」
「ただし…?」
「もちろんただのテニスボールじゃないの。爆弾が内蔵されている物や、衝撃を与えるとガスを発するもの、鉛が入ってるのもあるわ」
「げっ…」
「充分怖ええよ!」
「それが武器ってわけ。ラケットはみんな自分のを持っているから、それを使ってね。中身はランダムで、当たり外れがあります。普通のボールが入ってるのもあるからね。運も実力のうち!ね、千石君!」
「まあね!」
「千石…納得するなよ」
「あとは、島の中で調達できる物はなんでも使って構いません。あ、それと、タイムリミットがあるから注意して。今からちょうど3日後で終了。終了の時点で複数名が生き残っていた場合は、勝者なしとして、全員のリストバンドが作動します。わかりましたか?何か、質問あるかしら?」
「……」
「質問が無ければ、早速…」
「待て!」

ガタっと椅子を蹴って立ち上がったのは、不二だった。

「ふ…不二!やめろ!」
「手塚、黙って。こんな理不尽な事が許されるものか。今すぐ、僕達を全員帰してくれ!」
「やめるんだ、不二…っ」
「えー、いんじゃないッスか、言わせとけば」
「そーだそーだ、頑張れー不二ー!」
「越前、菊丸!無責任だぞ!あとでグランド20周!」
「えーっ!手塚、オーボー!」
「ちょっとそこうるさい。とにかく!馬鹿げた事はやめて、すぐに僕達を帰すんだ」
「えー、ヤダ〜」
「…」

不二の目がすっと開き、一歩前へと足を踏み出した。その途端。
男達(月刊プロテニスアルバイト陣)の手にした銃が一斉に火を噴き、不二は一瞬のうちに血まみれとなって、その場に倒れこんだ。

「…!!不二ー!!」
「あ…っ」
「不二先輩…!(ナイス、月刊プロテニス!)」
「うわあ、不二ぃーっ!……ごふ、ごふっ」

ショックのあまり吐血した大石はとりあえずおいといて、手塚は不二にかけよるとその半身を抱き起こした。

「しっかりしろ!」
「手塚…ぼ、僕はもう…ごめんね…せめて君だけは…助けたかった…」
「不二…っ、なんて、馬鹿な事を…!」
「ああ手塚…君が僕のために泣いてくれるなんて…嬉しい…」
「うーん、あれだけ撃たれたのに結構頑張るね。さすがは不二だな」
「乾、データを取るんじゃない!」
「て、手塚…さ…さよなら…君は、生き残って…くれ…」
「不二ーっ!!」

最後に少し微笑んで、不二はがくりと頭を垂れた。そして、動かなくなった。

「ふふ、これで私達が本気だって事、わかったでしょ。さあ手塚君、席に戻って?ぐずぐずしてると、誰かを適当に撃つわよ。…えっと、南君とかどうかな」
「ええっ!?なんで俺?」
「くっ…」

震える手で不二を床に横たえて、その手を胸の上にそっと乗せてやり、手塚は席に戻った。

(不二…なんで、こんなことに…!)

「さてと。では、順番に名前を呼ぶので、みんな一つずつボール入りのバックを持って外へ出る事!じゃあ、ガンバッテね!一番、堀尾サトシくーん!」
「ふ、ふぁいっ」

半泣きの堀尾の後に続いて、順々に生徒達は教室を出ていった。だんだんと、教室の中は静かになっていく。

「17番、手塚国光くーん!」
「……」

手塚は最後にもう一度不二を見て…そして、教室を後にした。



青学不二周助、敗退。



NEXT


なんかもうすでにダメな気配満々…!お暇な方は、おつきあい下さい…。
最後まで、こんな調子…ていうか、ますますアホらしくなります…多分。
不二先輩ファンの方、石を投げないで下さい!
でも、ウチの不二は黒いので、このままじゃ終わりませんよ…!ぶるぶる…!



モドル
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