「ヒノエくんのバカ!」
そう言って屋敷を飛び出して数十分。
私は京の都を目指して熊野路を歩いている。
原因は私のわがまま…でもヒノエくんには分かってもらいたかったのにな…
〜数十分前〜
「あのねヒノエくん」
「どうしたんだい姫君」
「私も一緒に行っちゃダメ?」
「だめだよ」
「どうして?」
「ふふ…どうしても」
なんでダメなの?
熊野に来て義父さんも本宮のみんなもやさしいし…
こんな気持ちになるなんて贅沢なのかな


「どうしたヒノエ」
そんな言葉で俺は我に返った。
「あーオヤジか」
「何があったんだよ。言ってみな」
「実はなあいつが俺と一緒に行きたいって」
「それでお前はなんて言ったんだよ」
「それは…ダメだと」
「あーあ」
俺の何がいけなかったんだ?
「あの子はな…」
そう言ってオヤジから聞かされたあいつの心の中…さみしい
なんで気づいてやれなかったんだ!
いつも楽しそうにみんなとやっていたから気づかなかった。
心の中では寂しさでいっぱいだったに違いないのに、回りに気づかせなかった。
オヤジはたまたま夜の庭で月光を浴びながら泣いているあいつの姿を見たそうだ。
「くそ!どこまで行ったんだ」
そんな後悔の中俺はあいつを追いかけた。


私は森の中をどんどん歩いていった。
ここはどのあたりだろう。空は刻々と黒い雲が増え、辺りは真っ暗になってきた。
「やだなんか降ってきそうだよ」
案の定空からポツリポツリと雨が降り出してきてしまった。
私は雨宿りが出来そうな所を探しながら、走り出した。

「やっと追いついた」
俺はやっとあいつの背中を見つけた。
でもどうやって話しかければいいんだ。…俺はいつもどおり話しかけることにした。
「どこにお急ぎかな姫君」

えっヒノエくん!?
私は気づかないふりをして走る速さを上げた。
でもヒノエくんは余裕でついてくる。
ふと後ろに気が行ってしまった瞬間私は木の根に足をとられ転んでしまった。
足首はすぐに腫上がり、捻挫してしまったようだ。
それでも私は足をかばいながら歩き出した。

―あーあ。こうなったら力ずくで行くしかないか―

ヒノエくんは私を軽く抱き上げると、
すごいスピードで走り出して近くにあった小屋に連れて来てくれた。
ここは熊野の人たちが狩などで使う小屋らしく、
保存食や油、仮眠が取れるように布なんかも常備してあった。
早速ヒノエくんはそれらを使って囲炉裏に火を点け服を乾かしだした。

―眼のやり場に困るじゃない!―

私は小屋の隅のほうに固まってしまった。
「どうしたのかな姫君。そんな隅に行って。
姫君も濡れた服脱いでこの布で体を包みな。風邪引くぜ」
「うっうん」
でも小屋を見渡しても隠れて服を脱げるようなところがない。
それに気づいたヒノエくんは、格子窓と柱の間に麻の紐を結んで、
そこに布を掛け目隠しを作ってくれた。
私はその後ろで濡れた服を脱いで布に包まった。
そのまま火の傍まで行って暖をとった。
ふと口からこぼれた一言……
「………二人きりだね」
自分で言った些細な言葉に胸が張り裂けそうになった。
それから言葉が続かない…外の雨音だけがシトシトと聞こえてくるくらいだった。


はくしゅん!
やっぱり冷えてきちゃった。足首もまだ痛いしどうしよう。
「姫君、寒いんじゃないか?こっちに来なよ」
なかなか動かない私にヒノエくんは
「あっそうか。足首痛めていたんだね」
そう言って立ち上がり私の傍に座った。
「ほらね。2人でいるほうが暖かい…」
頭だけコクンとうなずいた。
「ごめんな姫君」
ヒノエくんは分の悪そうに頭をかきながらそう言った。そしてこう続ける…
「オヤジに聞いて気づかされたんだ姫君の気持ち…
ホント気づいてやれなくてごめん!今度からはどこに行くにも一緒だよ」
それを聞いて私の心のモヤモヤは晴れてしまった。
「本当はさ危険だということと、半分俺のヤキモチでもあったんだ…」
キョトンとしている私にヒノエくんは言った。
「はら他の水軍の頭領とも話したり色々あるだろ。
その…他の奴らにお前を見られたくなかったんだよ」
プッと噴出してしまった。だってかわいかったから。
それを見ていたヒノエくんはそっぽを向いてしまった。
「私のほうこそごめんね。こんなの私のわがままだから気にしないで」
「いや、お前は全てを捨てて俺のところに来たんだ。
だからお前を守るのは俺の役目なんだ」
「ありがっ…はくしゅん!」
「おっとこれ以上風邪を引かせたらまずいね……さあおいで、姫君」
そう言ってヒノエくんは腕を布ごと広げた。
「こういう時はくっついているほうが暖かいんだよ」
私は言葉のとおりヒノエくんの腕に抱かれた。
「ホントあったかいし気持ちいい…なんだか眠たくなってきちゃった…」
「いいよ眠りな。俺がずっと抱いててやる」


姫君はよっぽど疲れていたようだ。安心したように寝息を立てながら眠ってしまった。
俺はやっと姫君をつかまえられたんだ。
「愛してるよ姫君。もう絶対離さない!」
眠る姫君にそう誓い、すこし前髪を上げて額に口づけをした。
「まあ出来れば唇にしたかったけど、やっぱそれは姫君が起きている時の方がいいよな」
もう少しこのまま居られる事を祈りながら腕の中の暖かさを確認した。
でもそうもいかないらしい。外の雨も止もうとしていた。
「姫君そろそろ帰ろう。オヤジ達が心配しても困るしな」
姫君を起こし、帰り支度をして小屋を後にした。


「ごめんねオブってもらって」
私の足首は予想以上に腫上がり、自分では歩けないくらいになっていた。
「いいよ。この方が姫君の温もりを感じられるから」
私はヒノエくんにしっかりつかまった。
「姫君。もっと俺にわがまま言ってくれたらいいからね。
この世で一番幸せにしてやりたいから」
「うん。もっと困らせちゃうから」
「でも一つだけ聞けないわがままがある。
…元の世界に帰りたいって言っても帰してやらないからな」
「分かってるよ。そんなこと言わないもん。ヒノエくんのことが好きだから…」
自然と出てきた言葉にびっくりして恥ずかしくなっちゃって…
私はヒノエくんの背中に顔をうずめた。

―ふふ…かわいいこと言ってくれるね―

ヒノエくんは私を石の上に座らし、瞳を見ながらこう言った。
「俺も好きだよ」
そして口づけをした。
今の私はきっと耳まで紅くなっているに違いない。
「かわいいね姫君」
勝ち誇ったように笑うヒノエくん。
「……バカ」
「男はね、惚れた女の為だったらバカにでも何にでもなれるんだよ」
2人で顔を合わせながら笑い出してしまった。
遠くのほうから声が聞こえた。
「…頭領!」
「おーお前たちか」
ヒノエくんは大きく手を振った。
「そろそろ帰ろう。迎えも来た事だし」
「うん」
私たちは本宮へと帰っていった。


あれから私はわがままを言わないようにしている。

―今度はもっと困らせちゃおうかな―

なんてちょっとは思うんだけどね。
私の大切な人がどんな風にしてくれるか楽しみだしね。


俺の姫君は今度はどんなわがままで困らせてくれるのかな…ふふ
…君ならどんなわがままを言ってくれるかな?
俺はどんな願いでも叶えてあげるよ。







憧れの!小屋で二人きりシリーズ(笑)よりぃ!有難うございま〜す(*^^*)
いいなぁ〜いいなぁ〜 ヒノエ君にわがままいっぱい言いたいぜっ(≧▽≦)
嬉しかったのが、さり気なく登場したヒノエのお父ちゃん!私、好きです(笑)
さすが、女性の気持ちはヒノエより分かってたりするんですよね〜(^-^)一枚上手!
小屋はいいよね〜 小屋は… ラブラブモード全開ですよvvその上、雨最高(笑)
えへvまたヒノエ創作書いてね〜♪

                                      by.ちょま






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