「――これ、どうすっかな・・・」

手元には、南楽器のおっさんに、あいつ――日野と行ってきたら、ともらったチケットが2枚。
しかもおチャイコプログラムときたもんだ。
あのおっさんも、俺の好みを理解した上で渡してきたみたいだな。

せっかくのチャンスだし―――誘うか。

そんなことを考えながら、駅前を歩いていたとき、急に後ろから声が降ってきた。

「・・・なにをどうするの?」

「うわっ!―――びっくりさせるなよ」

びっくりして振り返ると、そこには日野の姿があった。
「急に声をかけるな」そう文句の一つでも言ってやろうと思っていたのに。
あいつが相手じゃ、それも叶わない。―――惚れた弱みってやつか?

「ごめんね、声かけようと思ったら聞こえちゃったの。
 ――何かあったの?」

さっきの独り言を聞かれていたらしい。ここで会ったのも運命か?
・・・そうかもな。ここで誘わなきゃ男じゃないよな!
そう思った俺は、問いには答えずに逆に質問した。

「お前、今度の土曜日、空いてるか?」

突然の問いにびっくりした顔をしている。
自分の予定を思い出しているようで、視線は明後日の方向を向いた。

「土曜日?一応空いてる・・・かな?何時くらい?」

「えっとな―――確か、夕方」

チケットに書いてあった開演時間を思い出してみる。
確か夕方だったはずだから、18時より後だろうけど。
まぁ夕方には違いないし、ウソはついてない。

「『確か』って何?」

うっ。やっぱり突っ込まれるか。そりゃそうだよな。
俺だってそう言われたら突っ込むもんな。
時間をちゃんと確認しようと、さっきもらったチケットを引っ張り出す。
そして、それを「ん」といって差し出した。

「――演奏会?」

パッと目を輝かせてくいついてきた。これはいけるかもしれないな。

「そう。南楽器のおやじにもらったんだ。プロオケだからきっと上手いぜ。
 それにはじめから最後までおチャイコだ」

チケットにもプログラムは書いてある。
でも俺は言わずにはいられなかった。
少しでも興味を持ってもらいたくて。お前と一緒に行きたくて――。

「おチャイコって、演歌みたいだって言ってた人だよね?
 うん。楽しそう!行こうかな♪」

よっし!
心の中ではガッツポーズものだ。
だからといって、素直に表情や態度で示せる俺でもない。

「じゃあ、決まりな。――18:00開場だな。
 駅の改札に18:00でいいか?」

「うん!楽しみにしてるね」

笑顔で答えてくれたあいつの顔をみて、おっさんに感謝した。
これは、今度お礼のピアノ弾いてやらなきゃな。

 

* * * *

「あ、いたいた!土浦くん」

金曜日の放課後、エントランスを歩いていたら声をかけられた。
振り返らなくても相手は分かる。この声を間違えるわけもない。

「日野か。・・・なんかあったか?」

すごい勢いで近寄ってくるのを見て、思わず何かあったのかと思う。
でもそうではないらしい。首を横に激しく振っている。
そんなに振ったら、余計に頭がフラフラするんじゃないのか――。
そう思いながら俺は、あいつの次の言葉を待った。

「あ、あのね。明日なんだけど・・・」

息を整えながら、やっと吐き出した言葉。
その言葉は一瞬俺を不安にさせた。
――こいつ、やっぱり行かないとか言い出すんじゃないのか?と。
しかし、次の言葉は、俺にとっては意外なものだった。

「どんな服、着ていけばいいのかな?」

「―――は?」

なんでそんなことを聞いてくるのか、皆目検討もつかない。
素で聞き返した俺に、日野はちょっと赤くなりながら言葉を紡ぐ。

「あのね、オーケストラの演奏会ってはじめてなの。
 だからね、・・・その。・・・正装・・・かなと思って」

最後の方は消え入りそうな声だった。
こんなこと聞くのも恥ずかしいといった印象で、思わず噴出しそうになった。
やっぱりクラシックってのは堅苦しい印象なんだろうか。
笑いを堪えながら、素朴な疑問を口にしてみた。

「何、お前さ。俺が『やっぱり正装だ』って言ったら着てくるの?
 持ってるのか?――そういう服」

「っ!持ってないけど!・・・だから、心配で・・・」

はじめは強気に答えてたが、最後はやっぱり消えそうな声で。
そんな姿がたまらなく可愛く見える。恋は盲目とかいうけど、今まさにそんな感じかもな。
そんな自分への照れ隠しもあって、思いっきり声をあげて笑った。

「もうっ笑うことないでしょー!?」

日野は、そんな俺の態度が気に入らないらしく、すねたような怒ったような声を出す。
そんな顔も愛しくて。思わず体が動いてしまいそうだ。――抱きしめたい、と。

「わ、悪かったって。ごめん!――服だったよな。
 別になんでもいいと思うぜ。普通に出かけるような格好で。」

自分に沸き起こった感情を打ち消すかのように、一気に話す。
回答に満足していないのか、まだ不安そうな声で尋ねてくる。

「・・・普通でいいの?」

「あぁ。そんなかしこまった演奏会じゃないから大丈夫だろ。
 俺も正装なんかじゃ行かないし。――着たいのなら止めないけどな」

「もうっ!いぢわる〜!」

最後にニッと笑ったのがいけなかったのか。また機嫌を損ねてしまったか?
そんなことを思ったときに、ふと頭によぎった言葉を紡いでみた。

「明日な、できるだけ可愛い格好にしろよ」

「?どうして?――さっき、なんでもいいって・・・」

不思議そうな顔をして尋ねてきた。
答えは簡単だったが、さすがにまだ顔を見ていう度胸がなかった。
目をそらしながら、ボソッと呟いた。

「俺が隣にいて嬉しいから。」

―――ちゃんと聞こえたみたいだな。
真っ赤になった日野の顔を見て、演奏以外にも楽しみなものが出来た。
―――早く明日になってくれ。

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ぴろりさんのサイトでフリーだったので、これは頂き〜(><)ってな感じで攫ってきました(笑)
つっちーって、なんか可愛いなぁ(*^^*)また素敵な一面が覗けたような気がしますvv
これは続編がすご〜く楽しみですね!!果して香穂ちゃんはどんな可愛いカッコをしてくるんでしょうか??
こちらはつっちーサイドのお話になってますが、ぴろりさんのサイトには香穂ちゃんサイドヴァージョンもあります♪
フリーじゃないのが非常に残念ですが、香穂ちゃんの気持ちも覗いてみたい方はぜひGO!!ですね♪
ぴろりさん、素敵な創作を有り難うございました!!続編も楽しみに待っております(^◯^)

                                      by.ちょま