
| 「――これ、どうすっかな・・・」 手元には、南楽器のおっさんに、あいつ――日野と行ってきたら、ともらったチケットが2枚。 せっかくのチャンスだし―――誘うか。 そんなことを考えながら、駅前を歩いていたとき、急に後ろから声が降ってきた。 「・・・なにをどうするの?」 「うわっ!―――びっくりさせるなよ」 びっくりして振り返ると、そこには日野の姿があった。 「ごめんね、声かけようと思ったら聞こえちゃったの。 さっきの独り言を聞かれていたらしい。ここで会ったのも運命か? 「お前、今度の土曜日、空いてるか?」 突然の問いにびっくりした顔をしている。 「土曜日?一応空いてる・・・かな?何時くらい?」 「えっとな―――確か、夕方」 チケットに書いてあった開演時間を思い出してみる。 「『確か』って何?」 うっ。やっぱり突っ込まれるか。そりゃそうだよな。 「――演奏会?」 パッと目を輝かせてくいついてきた。これはいけるかもしれないな。 「そう。南楽器のおやじにもらったんだ。プロオケだからきっと上手いぜ。 チケットにもプログラムは書いてある。 「おチャイコって、演歌みたいだって言ってた人だよね? よっし! 「じゃあ、決まりな。――18:00開場だな。 「うん!楽しみにしてるね」 笑顔で答えてくれたあいつの顔をみて、おっさんに感謝した。
* * * * 「あ、いたいた!土浦くん」 金曜日の放課後、エントランスを歩いていたら声をかけられた。 「日野か。・・・なんかあったか?」 すごい勢いで近寄ってくるのを見て、思わず何かあったのかと思う。 「あ、あのね。明日なんだけど・・・」 息を整えながら、やっと吐き出した言葉。 「どんな服、着ていけばいいのかな?」 「―――は?」 なんでそんなことを聞いてくるのか、皆目検討もつかない。 「あのね、オーケストラの演奏会ってはじめてなの。 最後の方は消え入りそうな声だった。 「何、お前さ。俺が『やっぱり正装だ』って言ったら着てくるの? 「っ!持ってないけど!・・・だから、心配で・・・」 はじめは強気に答えてたが、最後はやっぱり消えそうな声で。 「もうっ笑うことないでしょー!?」 日野は、そんな俺の態度が気に入らないらしく、すねたような怒ったような声を出す。 「わ、悪かったって。ごめん!――服だったよな。 自分に沸き起こった感情を打ち消すかのように、一気に話す。 「・・・普通でいいの?」 「あぁ。そんなかしこまった演奏会じゃないから大丈夫だろ。 「もうっ!いぢわる〜!」 最後にニッと笑ったのがいけなかったのか。また機嫌を損ねてしまったか? 「明日な、できるだけ可愛い格好にしろよ」 「?どうして?――さっき、なんでもいいって・・・」 不思議そうな顔をして尋ねてきた。 「俺が隣にいて嬉しいから。」 ―――ちゃんと聞こえたみたいだな。
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