もうすぐ俺の誕生日。
彼女が出来てはじめての誕生日。
もう、ワクワクして楽しみで。
当然、香穂ちゃんと過ごせるんだと疑っていなかったんだ。「香穂ちゃん、今度の日曜日なんだけど・・・」
「・・・すいません、その日は・・・も、模試があって・・・」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
まさか、こんな展開になるなんて全然思っていなかったから。
* * * *
「なんか元気ないな。香穂ちゃんに振られたか?」
ご飯の時、兄貴に突っ込まれた。
「違うよ!今度の日曜日、模試なんだって」
「お前のことだから誕生日ってはりきってたんだろ」
「うるさいなっいいだろっ」
「お前らしいって褒めてるんだよ。
――よし、そんなお前にお兄ちゃんがプレゼントをやろう!
ぜぇったい予定入れるなよ」
なんだかよく分からないけど、
兄貴に祝ってもらうのもそんなにないかなと思うから。
香穂ちゃんと二人きりの誕生日はまた来年ってことで、
今年は兄貴で我慢しよう。――そう思ったんだ。
* * * *
今日は俺の誕生日。いくら模試だからってメールくらいあるかなって
思ってたんだけど、メールもなくてへこんでた。
「和樹、誕生日おめでと」
いつの間にか部屋にやってきていた兄貴に声をかけられる。
「あんがと」
「なんだよ、また元気ないな」
香穂ちゃんからメールも電話もないから、なんて
――そんなこと、兄貴になんて言えっこない。
「べ、別にそんなことないよ!
あ、兄貴からのプレゼントは?」
「そんなに焦るなって。直に届くから」
――届く?何が?
ちょうどその時、家のチャイムが鳴った。
「ほら、俺からのプレゼントだ。受け取ってこいよ」
なんだかよく分からないけど、
兄貴に促されて玄関の扉を開けた。
そこにあったのは――。
「和樹先輩、お誕生日おめでとうございますv」
「――へ?」
なんで香穂ちゃんがここにいるの?
「これ、ケーキなんですけど・・・」
「――え?」
今日は模試だって言ってたのに。
訳わかんなくなっちゃった。
「香穂ちゃん、いらっしゃい」
フリーズ状態の俺の後ろから兄貴が声をかける。
「こんにちは。お邪魔します」
「どうぞ、さぁ上がって。――和樹、お前へのプレゼントなんだから
受け取ってあげなきゃ、香穂ちゃん可哀相だろ?」
そう言われて、やっと思考回路が動き出したみたい。
目の前にいる香穂ちゃんが差し出すプレゼントを受け取る。
「あ、ありがとう。香穂ちゃん。びっくりしたよ」
「いえ。私も嘘ついちゃったし・・・」
あれ?・・・そういえば・・・。
ま、まさか・・・ね?
「なぁ兄貴のプレゼントは?」
「お前の目の前にあるだろ」
「兄貴、これ持ってて!」
受け取ったケーキを兄貴に預けると、
香穂ちゃんを引き寄せて抱きしめた。
兄貴からの一番のプレゼント、受け取らないとね。
「香穂ちゃん、俺、すっげー嬉しいよ!
今日は会えないかと思ってたからさ」
「私が先輩の誕生日に先輩以外の予定を入れると思いますか?」
そう言って俺の腕の中で笑う香穂ちゃんは、
今まで見たことないくらい可愛くて。
「盛り上がってるとこ悪いけど、俺出掛けてくるから」
「え?だって・・・」
父さんも母さんもいないのに。
「ま、そういうことだから。
プレゼントだからって無茶するなよ」
「あ!兄貴っ・・・」
「・・・行っちゃいましたね」
「ごめんね。うち、こんなんだけど
香穂ちゃんがお祝いしてくれるなら何だっていいや」
「今日は私はプレゼントなんで、何だってしますよ?」
「じゃあ――香穂ちゃんからキスして欲しいな」
いつも恥ずかしがってしてくれないんだもん。
でも今日は特別な日だから、俺のワガママ聞いてくれるかな。
そんな気持ちが伝わったのか、香穂ちゃんは誰もいないのに
恥ずかしそうに軽く触れるだけのキスをする。
「――もっとして?」
もっともっと香穂ちゃんに求められたい。
もっともっと香穂ちゃんを感じたい。
いつまでもずっとずっとこうしていたい――。
来年も再来年も、その先もずっと。こうしてお祝いしてくれる?
大好きな香穂ちゃんと過ごせるのが、一番嬉しいプレゼントなんだ――。