今日は何よりも大事な日。
なんか、朝から落ち着かなくて、ご飯の下ごしらえも早々に終わらせてしまった。
――ちょっとだけ、指、慣らしておくか。
* * * *
「こんにちは〜」
ちょうど食事が出来上がった頃に香穂がやってきた。
「よ、香穂。誕生日おめでとう」
「えへ、ありがと。なんか照れるね」
「そうか?まぁあがれよ、ちょうど出来たところだ」
「はーい、お邪魔しますv」
今日は香穂の誕生日。
「俺の手料理」を要望した香穂のために、
こうして家まで出向いてもらったわけだ。
「うわー美味しそう!」
「そうか?じゃあ食おうぜ」
俺たちは向かい合って二人でご飯を食べ始めた。
* * * *
ご飯の後、自然に俺の部屋に移動して、香穂のリクエストに従って
さっきからずっとずっとピアノを弾いているわけだが――。
いつになったら、終わるんだろうか・・・。
区切りがついたところで、香穂が次の曲を指名する前に口を開く。
「そうだ、香穂。お前のためにケーキあるけど、食べるか?」
「え?梁太郎くん、ケーキまで焼けるの?」
「いや、さすがにお菓子は作れないぜ。ケーキは姉貴が作った。
『せっかく香穂ちゃんが家に来るのなら』って張り切ってたぜ」
「うん、じゃあ食べる〜!!」
「じゃあ、ちょっと取ってくるな」
ケーキを持って再び部屋に戻って、香穂にケーキを食べさせながら
再びピアノに向かう。
――BGMとして、ハッピーバースデーを弾きたかったんだ。
「・・・香穂?」
弾き終わって振り向くと、香穂の目から涙が伝っていた。
「あっ、ごめん。なんでもないよ」
あふれ出る涙を拭ってやると、「ごめんね」と笑った。
「あのね、いつも家族にしかお祝いしてもらったことないの。
もう年末でしょ?だから誕生日会とかもしたことなくて・・・。
だから、梁太郎くんやお姉さんにお祝いされたんだって――
そう思ったら、なんだか止まらなくって――」
お前の誕生日を一緒に過ごすのが、家族以外が俺がはじめてってのは、
ちょっと――いや、かなり嬉しいかもしれない。
「お前の誕生日は、これからずっと俺が祝ってやるよ」
いつだって、忙しくたって、絶対に時間作ってやるよ。
いくら年末だからって、この日は俺にとっても大事な日なんだ。
お前が生まれてきた日なんだから・・・。
だから、この日だけは――俺だけの香穂でいてくれ。