ピンポーン!チャイムが鳴ったので急いでドアを開ける。
「香穂ちゃん、お誕生日おめでとう!」
ドアの向こうには大好きな先輩の顔。
私の誕生日を私の家で祝いたいって、先輩が希望したので待ってたの。
「ありがとうございます。
えへ、好きな人にお祝いしてもらえるのって嬉しいですね」
先輩を玄関まであげると、お母さんがやってきた。
「和樹くん、年末の忙しい時に来てもらって大丈夫だったかしら」
「はい、平気です。俺がお祝いしたいだけなんですから!
こちらこそ、忙しい時にお邪魔してすいません」
「いえ、いいのよ。後で一緒にケーキ食べましょ」
「はい!」
「じゃあ先輩、こっちにどうぞ」
私は先輩を自分の部屋に連れていった。
* * * *
「いつ来ても可愛い部屋だよね」
「そんなことないんですけどね」
だって、先輩に見えないところは結構すごいことになってる。
大掃除はじめたはいいけど、結局間に合わなくて。
――押し入れに荷物を押し込めてたりする。
「あ、これ。誕生日プレゼント」
「ありがとうございますv 今、あけてもいいですか?」
「うん、どうぞ」
「あ、手袋だ・・・けど、なんかおっきい・・・?」
「そうだよ。俺がはめられるサイズだもん」
「え?」
「だからね、こういうこと」
右手にはめてた分を奪い取ると、先輩の右手に収まった。
「はい、右手貸して?」
先輩が差し出す左手に、そっと右手をのばす。
「俺がいるときは、こうやって使うの。
一人の時は俺だと思って使ってね」
いわゆる「男除け」のつもりなのかな?
でも、ちょっと嬉しいかも。
だって・・・なんだか、先輩の手に包まれているみたいじゃない?
「わかりました。大事にしますね」
「あ、もうひとつプレゼント!」
「えっ?」
驚いて先輩の顔を覗くと、優しいキスが降ってきた。
* * * *
ちょうどオケ部の演奏会のビデオを見ていた時、家のチャイムが鳴った。
「香穂ちゃん、誰か来たみたいじゃない?」
「あ、そうですね。ちょっといってきます」
数十分前にケーキの受け取りにお母さんが出掛けたので、
家には私たち二人しかいなかったのだ。
下に降りて確認すると、どうも宅配便みたい。
判子を持って外に出るとお兄さんが何故か笑顔で。
「日野香穂子さんにお届けものです」
宅配便のお兄さんに手渡されたのは、真っ赤な薔薇の花束。
――だから笑顔だったの?・・・一瞬で顔が赤くなった気がする。
受け取る時に見た伝票には、やっぱりあの人の名前が書いてあって。
嬉しさと恥ずかしさが混じった複雑な感じがする。
花束を抱えて家に戻ると、いつの間にか先輩が降りてきていて。
その顔は、満面の笑みなんだけどやっぱり真っ赤な顔だった。
「先輩・・・これ・・・」
「ごめん!やっぱりやりすぎたかな?」
「いえ・・・すごく嬉しいです」
だって、好きな人から真っ赤な薔薇の花束なんて――。
・・・そういえば、なんで宅配だったんだろう?
「でも、どうして直接持ってこなかったんですか?」
ちょっといぢわるな質問をぶつけてみた。
「――――だよ」
「え?」
小さい声でボソボソ言うので全然聞こえなくて。
だから普通に聞き返してみたら、先輩は更に真っ赤になって答えてくれた。
「さすがに持ってくるのは恥ずかしかったの!」
――こういうところも実は好きなところなんだよね。
「先輩――今日は本当にありがとうございますv」
「え?」
先輩が驚いてる間に、先輩の唇に優しいキスを落とした。
今日ずっとそばにいれくれたお礼を込めて――。