しばらく寝ていたらしい。 頭がぼーっとする。 くらくらする意識の中で、目をぱちぱちすると、見慣れない真っ白な天上。俺はきちんとベッドに寝かされていて、着替えまでしてあるみたいだ。汗もかいてない。 取り敢えず部屋を見渡す。白で統一されている、というか、家具もなければテレビもない。高い天上と、白い壁と、白いチェストと、この真っ白なベッドだけだ。 ここは何処だろう。 「あ、起きた?」 突然どこからか聞こえた声。 びっくりして声の方へ振り向くと、白に近い金色に抜かれた髪。小さな身体。独特な声。 少年が立っていた。と言っても歳は俺より少し下くらいだろうが、少年、と言う言葉がぴったりな可愛らしい風貌だった。 「あんた、誰?」 警戒心剥き出しな声でそう聞けば、少年はにっこりと笑ってベッドに飛び乗ってきた。 「僕は、颯。お兄さんは、ユーキくん、だよね」 少年の唇から出た俺の名前に、どきり、とする。 「なんで、」 「あれ、覚えてないの?お兄さん、街で酔い潰れちゃってて、偶然通り掛かったからたすけてあげたんだよ。」 「酔い潰れて?」 いろいろ言いたいことはあるのに、少年の言葉を復唱することしかできない自分が馬鹿みたいだ。しかも不思議なことに、まったく覚えていない。でも、きっとそんな訳がない。 だって俺、酔い潰れるまで酒呑めないし。 「なんだ、ほんとに覚えてないんだ」 残念だなー、なんていって頬をぷくっと膨らますコイツが、不覚にも可愛いと思ってしまう。 「取り敢えず、世話になったみたいだから、ありがと。じゃあもう帰るから。」 不信感から捲し立てるようにそう言って、ベッドから出る、その瞬間、腕をひっぱられ再びベッドに崩れ落ちた。 見上げれば不意に唇に感じる、温かな感触。目の前には目蓋を伏せている颯。 状況がよく把握できない。頭の回転が遅くなってる。 ああ、俺、コイツとキスしてんのか。 「ちょ、やめろよ」 小さな肩を押し戻せば、哀しそうな表情をしている颯。 「なんで?だめ?だってユーキくん、泣いてたじゃない。僕が癒してあげる。」 そう言ってまた唇を重ねる。 泣いてた?俺が?ああ、まったく思い出せない。 ただ、思い出そうとすれば、胸が哀しく痛むのは、何故だろう。 「…思い出したくない」 不意に口から出た言葉に、自分でも驚く。何も覚えていないくせに、訳がわからない。 「でしょ?忘れちゃえ。」 颯にされるがままにしていた。服を脱がされ、重ねた深いくちづけ。甘くくぐもった声に、聴覚が犯されていく。 「はぁ、ユーキくん…」 胸が痛んだ。なにか大切なことを、すごく大切なことを、忘れている気がする。 ⇒