気を利かせて喜ばせたかった ただそれだけ * 「なんでまた」 「別に‥手が滑った」 帰ってきたらガソリンくさい部屋に不機嫌な声を上げる恵、俯く俺。 俯いた足元の畳には、黒いシミ。 別に困らせたい訳じゃないのに 恵はしばらく黙ってたけど、溜息をつきながら小さくこう言った 「困らせるなよ、」 説教されるのは好きじゃない。 「…‥」 「ユーキ、「恵ってさ」 「なんか…保護者みたい。」 冷めたように言い放って、乾いた笑みを零してみて ああ、俺って本当に可愛くない奴、と自嘲気味に思う。 「…保護者?何言ってんの」 「もう‥、いいよ」 そう言って恵の横をすり抜けて部屋を出て行こうとしたら 不意につかまれる手首 いつもみたいに振りほどこうとしても出来なくて こいつこんなひょろひょろしてんのにどこにこんな力があんだよ 「離せよ」 「ユーキ、何が言いたいの?」 「だからもういいって」 「よくない…っわ」 気付いたら恵の上に馬乗りにって押し倒していた 不意の動作に恵の後頭部は床にぶつかり鈍い音を立てる 「痛…なに」 訳も解らない、って顔で見上げられて少し胸が苦しくなった 前はお互いに言わんとしていたことが伝わってたのに なんで なんで解ってくんないの めぐみ。 気付けよ 解れよ 俺らの間には いつからこんなにも、ぽっかり穴が空いてしまったんだろうか next→